微生物インフォマティクス・フォーラム活動の記録

西田洋巳

 

2009/07/02 第一回セミナー

 

2009/11/11 第一回研究会

15:00-16:45 化1講義室

東京大学生物生産工学研究センター、環境保全工学部門、特任助教の新谷政己博士に「異種Pseudomonas属細菌内におけるプラスミドの振る舞いを高密度タイリングアレイを利用して理解する」のタイトルで話していただきました。カルバゾールの分解に関与するプラスミドpCAR1の機能、宿主細胞における安定性、細胞間における伝達頻度、環境変化に対応しての構造的変化などについて幅広い視点からのアプローチについてご紹介いただきました。また、その機能解析において高密度(プラスミドでは9塩基、染色体では11塩基密度)タイリングアレイが極めて有効に役立ったことを示されました。

 

2010/01/15 第二回セミナー

15:00-17:30 化1講義室

立命館大学生命科学部教授、日本学術会議会員の今中忠行先生に「超好熱菌の解剖」のタイトルでご講演いただきました。

超好熱始原菌Thermococcus kodakaraensisを中心として、好熱菌の分離、高温適応戦略、ゲノム構造、ポストゲノミクス、利用について基礎から応用まで幅広いご講演でした。

T. kodakaraensisは絶対嫌気性で至適生育温度85度であり、PCRの際に広く用いられているKOD所有の始原菌として知られており、高温適応戦略をタンパク質、DNA、細胞膜のレベルからの詳細な解析結果を示されました。その一つとして、KODがなぜ高いフィデリティと高速な伸長反応能を有するかについてタンパク質構造レベルから明らかにされました。

応用面では、T. kodakaraensisを用いて水素生産を行うスケールの大きな(実際にはメタン発酵からの生産より1000分の1のスケールで同程度の生産が可能ということで画期的なシステム)お話もあり、たった一つの微生物が持つパワーに圧倒された2時間半でした。

最後に南極観測隊での経験をスライドで示していただき、貴重なお話を聞かせていただきました。

最後になりましたが、今中先生をご推薦くださった生物生産工学研究センター環境保全工学の野尻秀昭先生に感謝し、当日参加していただきました多くの人々に感謝いたします。

 

2010/02/19 第二回研究会

16:00-17:30 化1講義室

本研究科、生産・環境生物学専攻、植物医科学研究室、特任准教授の大島研郎博士に「難培養性微生物の比較ゲノム解析植物病原細菌ファイトプラズマを例として」のタイトルで話していただきました。ファイトプラズマは細胞壁を持たず、人工培養の成功例が一つもなく、植物の篩部に局在して細胞内寄生するバクテリアです。大島さんらは世界に先駆け、その全塩基配列を決定され、そのゲノム解析では世界をリードされています。その発見の歴史からゲノム解析に基づく機能解析にいたるまで幅広く示していただきました。ペントースリン酸回路、ATP合成酵素を持たない点においてユニークであり、その生活環において植物と昆虫を宿主とする点においても興味深い生物です。ファイトプラズマおよびマイコプラズマの研究はそれらのゲノム解析からますますおもしろい結果を我々に示していただけるものと期待いたします。

 

2010/04/14 第三回研究会

17:00-18:30 化1講義室

本学、生物生産工学研究センター、細胞機能工学部門、准教授の葛山智久博士に「生合成研究におけるドライとウェット」のタイトルで話していただきました。化合物「ナフテルピン」に端を発し、有機化学、分子生物学、構造生物学がダイナミックに展開する様を活き活きと示されました。メバロン酸経路とMEP経路、HMG-CoA還元酵素の濃縮精製、クローニング、メバロン酸経路遺伝子クラスター、新型IPPイソメラーゼの発見、アセトアセチルCoA合成酵素、プレニル転移酵素、テルペン環化酵素と次々と画期的な成果を示され、その時々においてバイオインフォマティクスの利用とその限界について触れられました。それぞれの研究における明確な目的に向かい、活用できることを最大限活用し、その目的を達する様に触れ、参加者から活発な質問がありましたことを報告いたします。

 

2010/06/25 第三回セミナー

14:00-16:00 化1講義室

日立製作所フェローの神原秀記先生に「研究開発の経験 −質量分析用イオン化技術、DNAシーケンサなど−」のタイトルでご講演いただきました。

研究と事業には様々な点において共通点が存在していることを先生の経験から示され、「行動すること」の大切さを示されました。とにかくやってみることは実験科学においてとても重要であり、とことん追求する姿勢は必ず成果がついてくることを述べられたと思います。

「質量分析用イオン化技術」の開発において、世界に向けてアピールできることを考慮された経緯、また、これからは生命科学が発展することを予測し、その中で将来性が高いと注目した「DNAの塩基配列決定技術」にテーマを変えられ、それまでに築いてこられた「質量分析」の分野には戻らず、DNAシークエンサーにおける技術開発に集中し、この分野に貢献できるものを追及されました。その結果、DNAシークエンサーにおいて、レーザーをゲル板の側面から当てる技術の確立、マルチキャピラリーにおけるDNA断片検出技術の確立を成し遂げられました。これらの成果は世界に大きなインパクトを与え、その後のゲノム科学の発展に大きく寄与しました。その流れの中に大量並列型DNAシークエンサーも位置していることを認識いたしました。

現在、神原先生は「一細胞」に生じている現象の測定技術に関する研究を展開されております。近い将来、世界にインパクトを与える成果を出されることと信じております。

「やると決めればやること」「やったことにはけりをつけること」など、実例を挙げられ、今後のサイエンスを担っていく若手研究者(の卵)へ向け、メッセージをいただけましたこと、また、ご講演終了後の「交流会」において、院生からの質問の一つ一つについて応えていただきましたことは、本プログラムの教育活動における大きな貢献をしていただきましたと認識しており、大変感謝しております。

 

2010/10/28 第四回研究会

西田洋巳が「環境と遺伝子構成の関係」について話しました。なお、本研究会は農学生命情報科学特論IIIを兼ねて行いました。

 

2010/11/04 第五回研究会

本学、生物生産工学研究センター、環境保全工学部門、准教授の野尻秀昭博士に「プラスミドとクロモソームのコミュニケーション」のタイトルで話していただきました。なお、本研究会は農学生命情報科学特論IIIを兼ねて行われました。

 

2010/11/05 第六回研究会

16:00-18:00 図書館第一ゼミナール室

慶應義塾大学、先端生命科学研究所、教授の板谷光泰博士に「最新のゲノム合成事情とインパクト」のタイトルで話していただきました。本年、J. Craig Venter研究所より論文発表された“Creation of bacterial cell controlled by a chemically synthesized genome” (Gibson et al. Science 329: 52-56)は微生物学の範疇を超え、広くマスコミに取り上げられました。板谷先生はゲノムデザイン学において世界的リーダーのお一人であり、本研究会ではゲノムデザインについてご紹介されました。具体的には、納豆菌と枯草菌のモザイクゲノム、納豆菌のゲノム塩基配列の決定から4375遺伝子を推定し、その14%の遺伝子が納豆菌特異的であること、枯草菌ゲノムへシアノバクテリアのゲノムを8年の月日をかけて導入した“CyanoBacillus”についての解析、最小ゲノム構想、人工遺伝子クラスターの作成とその性質について紹介されました。これらのご発表に対し、参加者から活発な質問があり、有意義な時間を過ごすことができ、大変感謝しております。

 

2011/03/04 第一回研究交流会

15:30-18:00 化1講義室

「原始的なドメイン構造を有する酵素の探索」 岡田卓也(東京大学生物生産工学研究センター細胞機能工学、M2

「非モデル生物における新規ゲノム/トランスクリプトーム実験解析パイプライン」 小倉淳(お茶の水大学アカデミック・プロダクション、特任助教)

Phenotype MicroArrayによるプラスミドが宿主細菌に与える影響の探索」 高橋裕里香(東京大学生物生産工学研究センター環境保全工学、D2

Illumina GAIIを用いた枯草菌の解析事例」 松本貴嗣(東京農業大学生物資源ゲノム解析センター、ポスドク)

Unique genome evolution of Symbiobacterium thermophilum」 尹忠銖(東京大学農学生命科学研究科アグリバイオ、ポスドク)

「微生物ゲノム比較に基づく系統樹の作成方法」 西田洋巳(東京大学農学生命科学研究科アグリバイオ、特任准教授)

 

2012/06/21 第七回研究会

17:15-18:45 化1講義室

東京電機大学、工学部、環境化学科、教授の川崎寿博士に「微生物機能を活用したものづくりとその基盤研究」のタイトルで話していただきました。Systems Metabolic Engineeringの観点からの講義を行っていただきました。イノシン酸およびグアニル酸の微生物を使った生産に至る研究、グルタミン酸醗酵における基礎と応用研究の歴史について詳細に示していただきました。グルタミン酸がメカノセンシティブチャネルから細胞外に排出される研究などとても興味深い内容でした。これらの発表に対し、多くの質問があり、有意義な会となり、大変感謝しております。なお、本研究会は農学生命情報科学特論IVを兼ねて行われました。

 

2012/06/28 第八回研究会

17:15-18:45 化3講義室

千葉大学、園芸学部、助教の相馬亜希子博士に「逆転または分断化遺伝子と新奇RNAプロセシング機構〜遺伝情報は素直にかきこまれていない」のタイトルで話していただきました。Cyanidioschyzon merolaeにコードされているtRNA遺伝子の多様性について示されました。通常のtRNA遺伝子のアノテーションでは多くのアミノ酸をカバーできていなかった状況から、DNAには前後が逆にコードされており、その後RNA環状構造をとり、切断することにより、成熟tRNAとなる「逆転tRNA遺伝子」、および多くのイントロンにより分断された構造をとっている「高度に断片化されたtRNA遺伝子」を発見されたことを示されました。遺伝子注釈付けのまさに盲点といえます。貴重なお話をいただき、深く感謝いたします。なお、本研究会は農学生命情報科学特論IVを兼ねて行われました。

 

2012/07/05 第九回研究会

17:15-18:45 化1講義室

国立極地研究所、特任准教授の近藤伸二博士に「メタゲノムとメタトランスクリプトーム解析」のタイトルで話していただきました。メタゲノミクスにおける生物種、遺伝子機能、代謝経路の多様性研究、ヒトおよびマウスにおける腸内細菌叢の解析、およびメタトランスクリプトーム解析とメタゲノム解析の違いについて例を挙げられて示されました。講義についての質問も活発にあり、とても有意義な研究会となりました。深く感謝いたします。なお、本研究会は農学生命情報科学特論IVを兼ねて行われました。

 

2012/07/12 第十回研究会

17:15-18:45 化1講義室

西田洋巳が「ゲノム塩基組成の偏りと生物機能」について話しました。なお、本研究会は農学生命情報科学特論IVを兼ねて行いました。