第149回

日時 平成29年11月29日(Wed.)17:00-19:00
場所 東京大学農学部2号館1階化学第3講義室
演者 二宮正士(東大・農・国際フィールドフェノミクス)
演者 郭威(東大・農・附属生態調和農学機構)
演題 作物フェノタイピングの高速化

第148回

日時 平成29年11月22日(Wed.)17:00-19:00
場所 東京大学農学部2号館1階化学第3講義室
演者 松尾隆嗣(東大・農・生・応昆)
演題 テナガショウジョウバエの行動研究への高速シーケンス技術の適用
演者 内山博允(東京農大・生物資源ゲノム解析センター)
演題 NGSを使った昆虫研究

第147回

日時 平成29年11月15日(Wed.)17:00-19:00
場所 東京大学農学部2号館1階化学第3講義室
演者 木内隆史(東大・農・生・昆遺)
演題 なぜカイコはクワを食べることができるのか?
演者 今野浩太郎(農研機構)
演題 植物の防御を昆虫は打破して食べているのになぜ森林や草原は緑で植物だらけなのか?

第146回

日時 平成29年11月8日(Wed.)17:00-19:00
場所 東京大学農学部2号館1階化学第3講義室
演者 岸野洋久(東大・農・生・生測)
演題 集団遺伝と分子進化における数理モデルの温故知新
演者 井澤毅(東大・農・生・育種)
演題 作物の真の姿を知る!―フィールド・トランスクリプトームのすすめ―

第145回

日時 平成29年11月1日(Wed.)17:00-19:00
場所 東京大学農学部2号館1階化学第3講義室
演者 岩田洋佳(東大・農・生・生測)
演題 Selection 4.0: 植物のモデルベース開発
演者 平藤雅之(東大・農・国際フィールドフェノミクス)
演題 フィールドフェノタイピングにおけるセンシング

第144回

日時 平成27年7月15日(Wed.)13:00-14:30
場所 東京大学農学部2号館1階化学第2講義室
演者 清水青史(ヨーク大学)
演題 食品、薬品の統計熱力学

第143回

日時 平成26年7月8日(Tue.)17:15-
場所 東京大学農学部2号館1階化学第一講義室
演者 西島和三(持田製薬株式会社)
演題 科学技術イノベーションを担う創薬産業

第142回

日時 平成26年7月3日(Thr.)17:15-
場所 東京大学農学部2号館1階化学第一講義室
演者 諏訪牧子(青山学院大学)
演題 GPCRの分子機能メカニズムの多様性

第141回

日時 平成26年6月24日(Tue.)17:15-
場所 東京大学農学部2号館1階化学第三講義室
演者 浅川修一(東大・農・水圏生物科学専攻)
演題 高等生物ゲノム解析の実践

第140回

日時 平成26年6月23日(Mon.)17:15-
場所 東京大学農学部2号館1階化学第一講義室
演者 田中隆治(星薬科大学)
演題 植物ポリフェノールの科学―生理活性物質の構造活性相関―

第139回

日時 平成26年6月17日(Tue.)17:15-
場所 東京大学農学部2号館1階化学第一講義室
演者 鈴木榮一郎(味の素株式会社)
演題 基礎研究と実用開発における仮説検証とシミュレーション

第138回

日時 平成26年5月27日(Tue.)17:15-
場所 東京大学農学部2号館1階化学第一講義室
演者 北田修一(東京海洋大学)
演題 人工種苗が野生集団に及ぼす影響評価をめぐって

第137回

日時 平成26年1月7日(Wed.)16:00-17:30
場所 東京大学農学部7号館A棟7階716号室(会議室)
演者 宇賀 優作(農業生物先端ゲノム研究センター)
演題 根系形態の制御による作物の干ばつ耐性強化

第136回

日時 平成25年12月18日(Wed.)10:30-12:10
場所 農学部2号館1階化学第3講義室
演者 坊農秀雅(大学共同利用機関法人情報・システム研究機構)
演題 生命科学データベースの統合

第135回

日時 平成25年12月10日(Tue.)13:00-14:30
場所 東京大学農学部7号館A棟7階716号室(会議室)
演者 島崎研一郎(九州大学大学院)
演題 気孔の光による開口と情報伝達

第134回

日時 平成25年12月9日(Mon.)16:00-18:00
場所 東京大学農学部7号館A棟7階716号室(会議室)
演者 平藤 雅之(農業・食品産業技術総合研究機構北海道農業研究センター)
演題 大規模農業とICT

第133回

日時 平成25年12月6日(Fri.)15:00-
場所 東京大学農学図書館ゼミナール室1
演者 岩田洋佳(東大・農・生産・環境生物学専攻)
演題 ゲノミックセレクションの実用化に必要となる情報科学とは?

第132回

日時 平成25年12月3日(Tue.)16:00-18:00
場所 東京大学農学部7号館A棟7階716号室(会議室)
演者 三枝信子(国立環境研究所)
演題 世界の森林の二酸化炭素吸収量を測る

第131回

日時 平成25年11月27日(Wed.)10:30-12:10
場所 東京大学農学部2号館1階化学第3講義室
演者 児玉 悠一(DDBJ)
演題 拡大する公共データベースの役割

第130回

日時 平成25年11月22日(Fri.)15:00-
場所 東京大学農学2号館115号室
演者 二宮正士(東大・農・附属生態調和農学機構)
演題 野外での高速フェノタイピングに向けて
演者 亀岡孝治(三重大・生物資源)
演題 電磁波(光)を用いた作物の分光センシングとフェノミクス

第129回

日時 平成25年11月20日(Wed.)10:30-12:10
場所 農学部2号館1階化学第3講義室
演者 河野秀俊(日本原子力研究開発機構)
演題 タンパク質の相関構造解析

第128回

日時 平成25年11月15日(Fri.)15:00-
場所 東京大学農学図書館ゼミナール室1
演者 岸野洋久(東大・農・生産・環境生物学専攻)
演題 タンパク質の構造と遺伝子発現が映し出す環境適応の役者
演者 竹本和広(九州工大)
演題 ネットワークから捉える代謝システム-個体から群集まで-

第127回

日時 平成25年11月13日(Wed.)10:30-12:10
場所 農学部2号館1階化学第3講義室
演者 川端猛(大阪大学蛋白質研究所)
演題 低分子化合物の構造比較とドッキング計算

第126回

日時 平成25年11月08日(Fri.)15:00-
場所 東京大学農学図書館ゼミナール室1
演者 松尾隆嗣(東大・農・生産・環境生物学専攻)
演題 昆虫の食性は何で決まるか
演者 大島一正(京都府大)
演題 植食性昆虫の寄主適応:遺伝基盤と種分化の視点から
演者 尾崎克久(JT生命誌研究館)
演題 アゲハチョウが食べられる植物を見わけるしくみ ~分子から行動まで~: 今、非モデル昆虫の研究がおもしろい

第125回

日時 平成25年11月6日(Wed.)10:30-12:10
場所 農学部2号館1階化学第3講義室
演者 諏訪牧子(青山学院大学 理工学部 化学・生命科学科)
演題 GPCR 立体構造解析による機能メカニズムの解明

第124回

日時 平成25年11月05日(Tue)16:00-17:30
場所 農学部7号館A棟7階716号室(会議室)
演者 東出 忠桐(農業・食品産業技術総合研究機構野菜茶業研究所)
演題 施設トマトの多収化-品種と栽培技術の改良

第123回

日時 平成25年11月01日(Fri.)15:00-
場所 東京大学農学図書館ゼミナール室1
演者 勝間進(東大・農・生産・環境生物学専攻)
演題 piRNAバイオロジー:カイコを使ったpiRNAの研究
演者 門田幸二(東大・農・アグリバイオ)
演題 トランスクリプトーム解析の現況2013(詳細版)

第122回

日時 平成25年10月28日(Mon.) 15:00-
場所 農学部7号館A棟7階716号室(会議室)
演者 Lalit R. Verma(American Society of Agricultural and Biological Engineers)
演題 Agricultural and Biological Engineering for a sustainable world
要旨 The presentation will highlight the role of ASABE and the profession of Agricultural and Biological Engineers in addressing the global grand challenges in food, water and energy systems. Agricultural and Biological Engineers have a rich history of providing sustainable solutions to problems faced in meeting the essential needs of global population – safe and nutritious food, abundant water, clean air, renewable energy, and economic opportunity. Since 1907, ASAE (now ASABE) has been active in promoting the Agricultural and Biological Engineering profession. This responsibility remains critically important today in the global arena. ASABE is committed to promoting our expertise and importance in sustainably providing the essentials needs of life.

第121回

日時 平成25年10月23日(Wed.) 10:30-12:10
場所 農学部2号館化学第3講義室
演者 大林 武(東北大学大学院情報科学研究科)
演題 植物のデータベース

第120回

日時 平成25年10月18日(Fri.) 17:00-19:00
場所 農学部7号館A棟7階716号室(会議室)
演者 亀岡 孝治(三重大学大学院生物資源学研究科・教授)
演題 食・農分野における光(電磁波)分光センシングとその応用事例
要旨 ICTの利用におけるユビキタスからアンビエントの時代への流れの中で、センサーは重要かつ大きな役割を果たすことになる。食・農分野の現場におけるセンシングでは、非破壊(可能であれば非接触)、一斉同時、ノンケミカルなどの条件が不可欠とされ、このために光(電磁波)センシングに対する期待は大きい。食・農分野でセンシング対象となるのは栽培植物、農作物(農産物)、加工食品であるため、植物生理(内部構造)、化学ポテンシャルに基づく平衡過程、熱・物質同時輸送現象、およびエントロピー移動(生成)などの物理化学あるいは化学熱力学からの対象物の理解が分光センシング手法を決定する大前提となる。本講義で対象とする電磁波としては、X線(蛍光X線分光)、紫外・可視光(蛍光分光、UV・VIS分光、色彩画像解析、近・中赤外光(近・中赤外分光)、THz(THz分光)、電波(誘電分光)とし、光子のエネルギーが異なる光(電磁波)を用いた分光センシングに関する基礎事項の整理と食・農分野における応用研究について概説する。

第119回

日時 平成25年07月26日(Fri.) 13:00-14:40
場所 農学部2号館1階化学第三講義室
演者 成田年(星薬科大学・教授)
演題 生体防御反応が自制を失うメカニズム:痛み反応の統合的分子理解
要旨 「痛み」とは生体に対する危害を感受して、生体を防御するために必要なバイタルサインの役割を有する感覚反応である。しかしながら、外傷、ストレスならびに生活習慣病などで生じる難治性/慢性疼痛ならびにがん性疼痛では、正常な末梢-脊髄-脳間の機能ネットワークである“痛み伝達経路”の各所で恒常性の破綻が生じる。その結果、修復/治療が困難になり、バイタルサインとしての痛みは、自制を失う。こうした痛みの難治化には、DNAの3次元構造の変化や、転写、翻訳といった細胞内応答の根源に関わる修飾の異常が係わっていることが予想される。こうした現象を慢性疼痛にあてはめるならば、持続的な痛み刺激により細胞の形質が変わり、それが固定される、いわゆる細胞記憶ということが痛み記憶の一因であるとも考えられる。そこで本講では、最新の研究成果をもとに、転写調節、エピジェネティクス機構、miRNA 調節など、多角的な方面からのアプローチを用い、痛みの我慢という誤った認識の時代から、痛みを取り除く正義を議論する時代への移り変わりを、新しい”統合分子理解”というコンセプトで紹介する。

第118回

日時 平成25年07月02日(Tue.) 13:00-14:40
場所 農学部2号館1階化学第三講義室
演者 金城玲(大阪大学蛋白質研究所・准教授)
演題 蛋白質相互作用部位の複合構造モチーフと生物学的機能の差異
要旨 蛋白質の立体構造と機能の対応を知るためには、両者の分類を行い、その対応を調べれば良い。この講義では、立体構造比較を代表セットなしで真に網羅的に実行するための方法論の一例をまず述べる。この方法を蛋白質の低分子リガンド、蛋白質、核酸相互作用部位の原子レベルの総当たり構造比較に適用すると、相互作用部位の基本構造モチーフが数千種類程度得られる。蛋白質複合体において、基本構造モチーフは複数見いだされうるが、その組み合わせを「複合構造モチーフ」と定義する。近縁の蛋白質の間で、あるいは同一蛋白質でも異なる条件に応じて、異なる複合構造モチーフを持つ例が見つかるが、この複合構造モチーフの差異が、近縁蛋白質間の機能の差異、または同一蛋白質の状態の差異とどのように対応づけられるかを述べる。従来の機能アノテーションは蛋白質構造(または配列)の類似性ないし同一性に基づいて、機能の類似性ないし同一性を類推することが一般的であるが、構造(または配列)の差異と機能の差異の対応に着目することによって、ゲノムや生体内の文脈における各蛋白質の働きを俯瞰的に把握することができるかもしれない。

第117回

日時 平成25年06月28日(Fri.) 13:00-14:40
場所 農学部2号館1階化学第三講義室
演者 由良敬(お茶の水女子大院・人間文化創成科学研究科・教授)
演題 転写因子のDNA結合部位とターゲット配列の予測―バクテリアの転写ネットワークの予測に向かって―
要旨 ゲノム塩基配列決定プロジェクトにより、遺伝子の転写活性化または抑制をする転写因子が数多く明らかにされてきた。アミノ酸配列に基づくタンパク質ファミリー分類により、一次構造を用いて転写因子を推定することは可能になった。しかしどのアミノ酸残基がDNAのどの部分と相互作用するのかを非実験的に明らかにするのは、まだまだ容易ではない。例えば大腸菌においては、推定されている転写因子の約半分のDNAターゲット配列が未だにわかっていない。これらの転写因子がどの遺伝子の発現制御に関与しているかを推定することができれば、ゲノムにコードされている遺伝子群(タンパク質群)全体の挙動がわかるようになるはずである。そこで我々は、転写因子のDNA結合部位とターゲット配列を推定する方法を開発し、バクテリアゲノムにコードされている遺伝子が、どのようなセットで転写調整されているかを明らかにすることとをin silicoで明らかにする研究を進めている。

第116回

日時 平成25年06月10日(Mon.) 14:50-16:30
場所 農学部2号館1階化学第三講義室
演者 石橋純(生物研・昆虫機能研究開発ユニット・主任研究員)
演題 昆虫免疫研究におけるインフォマティクスの利用
要旨 昆虫は獲得性免疫を持たず、自然免疫のみで感染から身を守っているため、自然免疫研究のモデルとなってきた。昆虫は全生物種の半数以上を占めるほどの多様性を持ち、幅広い環境に適応している。このためには、効率的な生体防御機構は欠かせないものである。本講義では、昆虫の免疫研究について紹介し、さらに非モデル昆虫由来の機能未知タンパク質の構造生物学を用いた機能解明の例について紹介する。

第115回

日時 平成25年06月04日(Tue.) 13:00-14:40
場所 農学部2号館1階化学第三講義室
演者 本間光貴(理化研・制御分子設計研究チーム・チームリーダー)
演題 タンパク質構造情報とリガンド情報を最大限活用したインシリコスクリーニングを目指して
要旨 インシリコスクリーニングには、タンパク質構造に基づく方法(SBDD)と既知リガンド情報に基づく方法(LBDD)に大きく分けることができる。インシリコスクリーニングを実施する際、従来は、単一の方法だけで計算する場合が多かったが、どのような手法を使ったとしても、一つの「仮説」に過ぎず、単一で万能な方法は存在しないため、安定して成功を収めることは難しかった。近年、LBDD/SBDDという区分に拘らずに、既知の情報をすべて活用しつつ、複数の方法論を組み合わせてインシリコスクリーニングを実施する考え方が普及してきた。本研究室でも、そのようなコンセプトのもと、PALLAS/MUSES/LAILAPSなどの各システムを構築し、多くの方法論、多くの計算条件を半自動的に検証し、検証の結果精度が高いと推測される方法を、目的に応じて組み合わせて実施する体制を整備しつつある。当日は、これらのシステムの概要や具体例を紹介するとともに、今後の課題について議論したい。

第114回

日時 平成25年05月28日(Tue.) 13:00-14:40
場所 農学部2号館1階化学第三講義室
演者 池口満徳(横浜市大院・生命医科学専攻・准教授)
演題 生体系の分子シミュレーション
要旨 生命現象を担うタンパク質やDNAの立体構造が、原子レベルで解明されるに従って、それがどのように動いて実際に機能を果たしているか、計算機を用いて探る分子シミュレーションが盛んに行われるようになってきた。本講義では、生体系の分子シミュレーションについて、その原理から実際の応用まで説明する。
たとえば、腎臓などで水を透過する役割を果たしているアクアポリンというタンパク質について考えてみる。アクアポリンは、生体膜に埋もれている膜タンパク質で、水分子を膜の内外に透過することができる孔を持っている。この孔には水しか通らない。もし、水素イオンを通してしまえば、膜内外のpH差が崩れてしまう。したがって、アクアポリンは,水は通すけれど、水素イオンを通さないような仕組みを持っているはずである。実際には、どのような仕組みで、そのようなことを実現しているのだろうか?近年、分子シミュレーションを用いてそのような問題に取り組む研究が報告されている。生体膜を仮想的に計算機の中に作り、その中にアクアポリンを入れて、アクアポリンの孔の中を水がどう動くか計算してみるのである。そうすることによって、アクアポリンが水素イオンを通さない仕組みがわかるようになってきた。
 以上の研究は、分子シミュレーションの応用例の一つであるが、この他にも様々な生体分子に分子シミュレーションは適用されている。講義では、いろいろな例を紹介したいと考えている。

第113回

日時 平成25年05月21日(Tue.) 13:00-14:40
場所 農学部2号館1階化学第三講義室
演者 富井健太郎(産総研・細胞システム解析チーム・チーム長)
演題 タンパク質立体構造情報解析とその応用
要旨 タンパク質立体構造解析技術の進展とアミノ酸配列比較を含む広義の立体構造予測技術の改良等により、近年、利用可能な構造情報の増大が著しい。本講義では、タンパク質立体構造予測の現状とその有用性や適用範囲を概説した上で、われわれが開発しているタンパク質基質結合部位の高速比較法を含め、実験や予測等により得られる立体構造情報をタンパク質の機能推定等に活用するためのバイオインフォマティクスの手法を紹介する。

第112回

日時 平成25年05月14日(Tue.) 13:00-14:40
場所 農学部2号館1階化学第三講義室
演者 伏信進矢(東大院・応用生命工学専攻・教授)
演題 グリコシド結合を切断する酵素の反応機構
要旨 グリコシド結合でつながったポリマーは、セルロース、澱粉、キチンなどの安価なバイオマスとして生物圏に豊富に存在するため、その結合を切断して分解する酵素はバイオインダストリーの観点から非常に有用である。また、グリコシド結合を持つ基質(糖質)は多様であり、それに作用する酵素は膨大な数のファミリーが存在する。糖質分解酵素の活性中心は多くの場合2つのカルボキシル基を持つ残基(アスパラギン酸またはグルタミン酸)だが、近年、興味深い反応機構を持つ酵素が多数見つかってきている。X線結晶構造解析などの立体構造情報を知る手法とコンピュータ解析を利用して得られた最新の研究成果について紹介する。

第111回

日時 平成25年2月1日(Fri.) 13:00-15:00
場所 東京大学農学部7号館A棟7階716号室(会議室)
演者 邱 国玉先生 (北京大学)
演題 Water versus energy, a key issue to adapt global warming and urbanization
要旨 Water is needed to generate energy. Energy is required to deliver, clean, and evaporate water. Thus, there are extensive linkages between water and energy use. Meanwhile, both resources may limit the other, especially in the context of urbanization and industrialization as well as climate change. Unfortunately, up to now, little attention has been paid to the tension between water and energy in academic nstitutions, governmental agencies, and industries. Since water and energy nexus is extremely important for human beings to adapt to global arming, it is time for us to share some of our frontier ideas in this field. In this study, based on paper reviewing and extensive investigation, we explore the nexus between the water and energy in China, mainly focused on 4 fields: 1) water resource development and its energy consumption; 2) water and energy nexus in agriculture; 3) water and energy nexus in industries; and 4) energy consumption by evapotranspiration and its effect on reducing urban temperature. By this study, many new data and results are obtained, which are useful for better water and energy management and adaptation to climate change.

第110回

日時 平成25年1月29日(Tue.) 13:00-15:00
場所 東京大学農学部7号館A棟7階716号室(会議室)
演者 Dr. Ep Heuvelink(Wageningen University)
演題 Modern Greenhouse Crop Production - Physiology and Management
要旨 Dutch greenhouse industry is leading in the world and achieves very high production levels. In this seminar the reasons for these high production levels are discussed. Emphasis is on the environmental factors: natural and supplementary light, temperature, carbon dioxide and humidity and the root environment. How are these factors controlled, and how do they influence crop yield. The latter question is discussed based on underlying processes like photosynthesis, leaf area development and assimilate partitioning. The importance of maintaining a balance between the different growth factors and the need for analysing which factor is limiting production is made clear. Greenhouse equipment and modern crop management is presented. The relevance of semi-closed greenhouses for further improvement of production is shown.

第109回

日時 平成25年1月15日(Tue.) 15:00-17:00
場所 東京大学農学部7号館A棟7階716号室(会議室)
演者 羽島知洋(独立行政法人海洋研究開発機構)
演題 気候と炭素循環の相互作用下における気候変動予測
要旨 IPCCの報告書等で目にする温暖化の予測は、気候モデルと呼ばれる数値計算モデルによって行われている。このような数値計算モデルに、例えば毎年の大気CO2濃度を与えると、様々な過程を経て最終的に温暖化する様がシミュレートされる。しかし長期的な予測では、大気CO2濃度や気候の変化が海や陸域生態系の炭素収支に変化をもたらす過程が重要になってくる。例えば陸域では、CO2濃度が上がると光合成速度が上昇し、陸に固定される炭素量が増えることが期待される。一方で、気温が上昇すると土壌有機物の分解が促進されるなどにより、陸から炭素が失われる可能性が生じる。このように、CO2を始めとする人為的な温室効果ガスの排出とそれにともなう気候変動は、海陸における炭素収支を変化させ、将来の温暖化の度合いを変え得る。このような一連のプロセスを明示的に取り扱うため、気候モデルに海陸炭素循環過程やその他重要な過程を組み込んだ”地球システムモデル”が開発され、有用なツールとして用いられている。海洋研究開発機構/東大大気海洋研究所/国立環境研究所 では、地球システムモデル”MIROC-ESM”を構築し、温暖化予測等に用いている。一連の予測は主に、CMIP5と呼ばれるモデル間相互比較プロジェクトの実験プロトコルに沿って実施されており、温室効果ガス排出シナリオに基づいた予測やその他感度実験等が行われている。本講義ではこれらの内容、特に陸域生態系・炭素循環と気候との相互作用に焦点を当てながら紹介する。

第108回

日時 平成24年12月18日(Tue.) 13:00-14:30
場所 東京大学農学部7号館A棟7階717号室(セミナー室)
演者 彦坂幸毅(東北大学大学院生命科学研究科)
演題 葉群光合成モデルを用いた植物葉群構造の環境応答の予測
要旨 植物群落がどれだけCO2を吸収するかは葉群光合成モデルによって推定することができる。葉群光合成モデルは、門司-佐伯による開発以来多くの改良が加えられ、現在では多くの陸域植生モデルや農作物の生長モデルに利用されている。しかし、葉群光合成モデルを使うためには、群落の葉面積(葉面積指数)などの構造的性質や葉の光合成特性などの生理的性質にかかわるパラメータなどの値が必要である。これらのパラメータの値は植物群落の構成種や群落がおかれている環境によって大きく異なり、その依存性は定性的にはある程度理解されているが、定量的に予測することは現時点でもなお困難である。植物の性質の環境応答を予測するために利用されているのが最適化理論の導入である。最適化理論の導入により、例えば最適な葉面積指数が種や環境によって異なることが予測され、この予測は現実の植物群落の変化をよく説明できるようになった。ただし、最適化理論の予測は、葉面積指数が増える/減るといった定性的な変化はよく説明するが、定量的には正しくない。既存の最適化理論を使ったモデルの問題点として、2点指摘されている。一つは葉群を静的な系として扱っていることである。植物葉群では葉の生産と枯死が起こっており、このようなダイナミクスを考慮することによって最適値が変わってくることが指摘されている。もう一つは、最適化理論の限界である。植物群落では隣接個体との競争が起こっており、最適なふるまいをした植物が必ずしも勝ち残れるわけではない。隣接個体との競争が起こっている場合には、ゲーム理論の適用が必要である。葉群動態を取り入れたモデル(Hikosaka 2003 Am Nat)もゲーム理論を取り入れたモデル(Anten 2002 J Theor Biol)も構築されていたが、両方を取り入れたモデルはなかった。今回我々は葉群動態モデルにゲーム理論を導入することにより、これら二つの問題を同時に解決することを試みた(Hikosaka & Anten 2012 Funct Ecol)。両者を考慮したモデルは現実の植物群落の葉面積指数をよく説明し、葉群動態とゲーム理論の両方を取り入れることが重要であることを示唆した。

第107回

日時 平成24年12月12日(Wed.) 13:00-14:30
場所 東京大学農学部2号館化学第2講義室(化2)
演者 小島正樹(東京薬科大学)
演題 X線溶液散乱法を用いたタンパク質の立体構造予測とバイオインフォマティクスへの応用
要旨 X線溶液散乱(SAXS)は、試料溶液にX線を照射して得られる散乱パターンから、分子の大きさや性状を解析する手法です。溶液を対象とするため、得られる情報量が少ないにも関わらず、測定が容易かつ解析が簡便であるため、近年創薬の分野でも注目を集めています。私どもは、SAXSの構造情報と、分子の二次構造情報のみから、アミノ酸残基レベルの立体構造を構築し、この粗視化モデルを原子レベルまで精密化することに取り組んでいます。現状における問題点と将来への応用についてお話致します。

第106回

日時 平成24年12月6日(Thu.) 10:00-11:30
場所 東京大学農学部7号館A棟7階716号室(会議室)
演者 飯倉善和(弘前大学大学院理工学研究科)
演題 リモートセンシングにおける誤差要因とその対策
要旨 誤差にはおおきく分けて系統誤差と偶然誤差がある。系統誤差に対する対策として、短期的には校正を、長期的には原因を解析して補正式を導入する。偶然誤差に対する対策としては、測定回数を増やして、その平均を取るのが最も一般的である。リモートセンシングの場合、測定量(対象の特徴量)における誤差(量的な誤差)ばかりでなく、三次元空間上の位置(幾何的な誤差)も問題になる。著者は、1980年代にライダーによる成層圏エアロゾルの観測に取り組み、光電子増倍管の過渡応答に起因する誤差や地球の曲率や大気の屈折率に起因するエアロゾル分布の推定誤差を検討した。この経験は、1990年代以降の光学センサによる衛星画像の解析に生かされている。本講演では、これらの経験を紹介するとともに、合成開口レーダやハイパースペクトルデータにおける誤差についても検討を加える。

第105回

日時 平成24年11月20日(Tue.) 13:30-15:00
場所 東京大学農学部7号館A棟7階716号室(会議室)
演者 小林秀樹(独立行政法人海洋研究開発機構)
演題 カリフォルニア州のサバンナ生態系における炭素・水循環の長期観測とモデル化
要旨 アメリカ合衆国カリフォルニア州はサンフランシスコやロサンゼルスをはじめ多くの観光地を有し日本人にも馴染みのある地域である。その大部分が地中海気候に属するこの地域は、気候が温暖で青空が広がるイメージがある。一方で雨が少ないこの地域は、植物の生育にとっては過酷な環境であることはあまり知られていない。本講演では、このように雨が少なく夏の気温が40℃近くになるシェラネバダ山脈の山麓のオーク(ナラ)林の季節性や林内光環境、炭素・水循環過程について説明する。本講演では渦相関法・デジカルカメラなどによる現場観測、リモートセンシング観測(LiDARやハイパースペクトルセンサ)、さらには生態系モデルによる解析など様々なアプローチによるオーク林の生態水文調査を紹介する。

第104回

日時 平成24年10月3日(Wed.) 13:00-18:00
場所 東京大学農学部2号館2階第1講義室(化1)
主催 アグリバイオインフォマティクス研究会 
演題 モチーフ解析最前線
趣旨 アノテーション情報の豊富なモデル生物の比較トランスクリプトーム解析は、候補遺伝子の同定からGene Ontology(GO)解析やパスウェイ解析などの様々な機能解析が可能です。近年の次世代シークエンシング技術(NGS)の進歩により、主な解析対象が非モデル生物であるアグリバイオの分野においてもドラフトゲノム配列決定やトランスクリプトーム解析(RNA-seq)など様々なレベルの解析が可能になりつつあります。しかし、非モデル生物の場合は絶対的なアノテーション情報が不足しているため、「候補遺伝子(or 転写物)の同定」以降の選択肢としてGO解析などを行うのは実質的に不可能です。 そこで本研究会では、塩基配列情報が豊富にある状況での自然な選択肢として「モチーフ解析」をテーマとした講演会を行います。モチーフ同定の実際やプロモーター解析などのモチーフ解析周辺について、第一線でご活躍の先生方から開発したプログラムや使用上の注意、競合プログラムとの違いや課題などについて最新のご研究内容を紹介いただきます。

第103回

日時 平成24年9月27日(Thr.) 15:00-17:00
場所 農学部2号館1階化学第2講義室(化2)
演者 清水青史博士(イギリス ヨーク大学)
演題 溶液の物理化学と統計熱力学
要旨 Statistical thermodynamics is actually useful! It can be applied to real questions in biochemistry and engineering, and can resolve historical headaches. This is the message that I will try to convey in this seminar. I am going to start from the basic theory of solvation. I will then turn to a number of historical confusions and controversies that have plagued the field for decades. The examples range from protein denaturation and stabilization all the way to drug solubilzation.

第102回

日時 平成24年9月25日(Tue.) 13:30~18:00
場所 農学部2号館2階化学第1講義室(化1)
オーガナイザー 西山智明(金沢大学際実験センター)門田幸二(東京大学)、長谷部光泰(基礎生物学研究所)
演題 Challenge to de novo sequence of relatively large genomes with new sequence technologies
要旨 新型シーケンサーの普及により、モデル生物はもとより、非モデル生物のゲノム解読も1研究室単位で出来る時代になりつつあります。しかし、植物や動物のようにギガベース単位のゲノム解読は、まだまだ容易ではありません。そこで、リピート配列の多い複雑なゲノムをアセンブルする方法、コンピューターフレームワークの改良、PacBio RSの配列を効率良く修正する方法について最新の研究成果を発表し議論するとともに、具体例として、HiSeq2000 によるカキとトノサマバッタゲノム解読、PacBio RSとHiSeq2000を用いた食虫植物フクロユキノシタゲノム解読について検討します。

第101回

日時 平成24年7月24日(Tue.) 13:30~15:00
場所 農学部7号館A棟7階716号室(会議室)
演者 Xulin Guo教授
(Geography and Planning University of Saskatchewan, Canada)
演題 Challenges Facing Remote Sensing of Grassland
要旨 Remote sensing has been applied on many aspects of grassland study. High, medium, and low resolution images have been used on fine, medium and large scales of grassland health monitoring, productivity estimation, fire/grazing disturbance evaluation, habitat mapping, and interactive effects of climate, external disturbance, and ecosystem succession analysis. Remote sensing not only provides tools for ecological studies, but also helps with economical consideration and management policy making. However, it is challenging to work in grassland ecosystems with remote sensing techniques. First, it is the scale issue; even though remote sensing provides different resolutions, finding the suitable resolution is difficult as it depends on landscape variation, the research question, and scale is spatially and temporally dynamic. Second, grassland is very sensitive to moisture; one precipitation event can change the ecosystem immediately which limits estimation accuracy. One problem specific to grassland is the issue of dead materials, especially in protected areas. The amount of senescent materials within a grassland ecosystem can reverse the relationship between grass vegetation (e.g. biomass) with remote sensing signals (e.g. NDVI).

第100回

日時 平成24年5月30日(Wed.) 13:00~14:30
場所 農学部2号館1階化学第二講義室(化2)
演者 Ponmalai Kolandaivel教授
(Bharathiar University, INDIA)
演題 Overview of Bio-nanotubes
要旨 The biggest challenge in nanotechnology is the synthesis of pure monodispersed nanotubes with identical structure and tunable physical and functional properties. Material nanotubes partially fulfill this goal and it is difficult to synthesis in a controlled manner so as to produce identical nanotubes in bulk. The same problem will arise for bio-nanotubes, but it has some advantages, and it has applications in biological and medical contest. We have constructed few bio-nanotubes using cyclic peptides through theoretical methods and studied the electronic structure calculations and molecular dynamics. The motion of ions through these tubes duplicates the ion channel of the cell which has also been studied.

Ponmalai先生は、JSPS外国人招へい研究者(受入れ先: 清水)として本学に滞在しています。本セミナーでは、生体分子の構造および相互作用を、分子モデリングや分子シミュレーションなどの計算化学的手法を用いて解析された研究成果をお話しいただきます。

第99回

日時 平成23年12月14日(Wed.) 10:15-12:00
場所 農学部2号館1階化学第三講義室(化3)
演者 川端 猛 先生
(大阪大学)
演題 低分子化合物の構造比較とドッキング計算への応用
要旨

第98回

日時 平成23年12月09日(Fri.) 16:00-17:00
場所 アネックスエンゼル研究棟講義室
演者 田村浩一郎先生
(首都大学東京)
演題 分子進化のインフォマティクス
要旨 相同なDNAやタンパク質について、それら進化的な関係を推定する分子系統解析は、バイオインフォマティクスにおける大きなテーマの一つでる。分子系統解析は、(1)配列データの準備、(2)多重配列アライメント、(3)系統樹推定、(4)系統樹の可視化、の大きく分けて4段階の過程で進められるが、いずれの過程にも理論的な基盤とコンピュータによる処理が必要で、これまで数多くの方法理論やコンピュータプログラムが開発されてきた。次世代シーケンサによって大量データが得られる昨今、さらなる発展が望まれている。本講義では、講師自身が長年、開発に携わってきたMEGAソフトウェアを用い、分子系統解析の実際を実践的に紹介する。また、各段階の解析方法について、それらの理論的基盤や実践のためのノウハウについても解説する。

第97回

日時 平成23年12月09日(Fri.) 15:00-16:00
場所 アネックスエンゼル研究棟講義室
演者 岸野洋久
(東大・院農、生産・環境生物学専攻)
演題 ゲノム進化の統計的モデリング
要旨 いまでは遺伝子配列やゲノムを比較するのは普通になっていますが、このセミナーではこれに関する話題を提供します。直接目に見えないもの、はかりにくいものが、分子進化の目で眺めると、見えてきます。ここにおいて、統計的モデリングはデータの持つ情報に生物学的な意味付けを行います。クジラの系統分類というクラッシックな問題では、分析の背後にある前提により偏った推定をすることがあることを学び、微生物群集の多様性をはかる問題では階層構造を考慮に入れます。ミトコンドリアの分子進化速度の変化を眺めるうちに生物学的寿命へと思いを巡らせ、”evidence based”動態モデルを通してウィルスにおける適応的突然変異を予測します。適応はコストを伴うことを感じ取られるでしょう。多様な情報を組み合わせて統計モデルという形で統合することにより、興味深い問題に定量的に答えていく、その試みを紹介します。

第96回

日時 平成23年12月07日(Wed.)10:15-12:00
場所 農学部2号館1階化学第三講義室(化3)
演者 末次 克行 先生
(農業総合技術研究所)
演題 昆虫ゲノムアノテーションと統合データベースの開発
要旨

第95回

日時 平成23年11月30日(Wed.)10:15-12:00
場所 農学部2号館1階化学第三講義室(化3)
演者 諏訪 牧子 先生
(東大・院農、産業技術総合研究所)
演題 膜タンパク質のバイオインフォマティクス
要旨

第94回

日時 平成23年11月25日(Fri.)16:00-17:00
場所 農学図書館ゼミナール室1
演者 長谷部光泰先生
(基礎生物学研究所)
演題 非モデル植物のゲノム解析とゲノム比較からわかった植物の進化
要旨 動物の比較ゲノム解析により、発生に関わる遺伝子族は左右相称性動物の祖先段階で確立されていたことが明らかとなった。一方、陸上生物のもう一つの大きな系統である陸上植物では、系統間で著しい形態、発生過程の違いが知られている。このような発生過程を制御している遺伝子がどのように進化してきたのかは、非被子植物のゲノムデータの欠如からよくわかっていなかった。本研究では、小葉類イヌカタヒバSelagienlla moellendorffii、コケ植物セン類ヒメツリガネゴケPhyscomitrella patensのwhole genome shotgun配列情報を利用して、約700のシロイヌナズナの発生過程に関わる遺伝子ホモログの系統解析を行った。その結果、従来知られていた発生多様性に関わらず、非被子植物は被子植物の持つほとんどの遺伝子族を保有していることがわかった。一方、発生多様性を導いている原因として、(1)被子植物特異的遺伝子族の存在、(2)遺伝子の機能転換、(3)各系統におけるいろいろな遺伝子族の平行的な遺伝子重複による遺伝子の機能分化が関係しているらしいことがわかった。ゲノム解読の実際とそこからわかる生物学的面白さについて講義する。

第93回

日時 平成23年11月25日(Fri.)15:00-16:00
場所 農学図書館ゼミナール室1
演者 松尾隆嗣
(東大・院農、生産・環境生物学専攻)
演題 昆虫の生態と遺伝子レパートリーの進化
要旨 ゲノム中には同じような構造・機能を持つ遺伝子が近接して多数存在する場合があり、多重遺伝子族と呼ばれています。嗅覚や味覚の受容体も、少しずつ異なるたくさんの遺伝子が一つの生物のゲノム中に多数存在しています。このような多重遺伝子族の形成には遺伝子重複と機能分化が重要な役割を果たすと考えられていますが、その過程は偶然の力と自然選択の力がせめぎ合うダイナミックな進化の現場です。特定の機能を持つ遺伝子のレパートリーをどれくらい持っているかはそれぞれの生物ごとに固有の性質ですが、ゲノムレベルで見て初めて明らかになります。遺伝子レパートリーの進化が昆虫の生態とどのように関わっているか、遺伝子レパートリーの大きさと進化可能性との関係、などについて考えます。

第92回

日時 平成23年11月16日(Wed.)10:15-12:00
場所 農学部2号館1階化学第三講義室(化3)
演者 坊農 秀雅 先生
(ライフサイエンス統合データベースセンター)
演題 データベース統合によるオープンで知の巡りのよい生命科学研究
要旨

第91回

日時 平成23年11月11日(Fri.)16:00-17:00
場所 農学図書館ゼミナール室1
演者 門田幸二
(アグリバイオインフォマティクス教育研究ユニット)
演題 農業生物のトランスクリプトーム解析における情報処理
要旨 次世代シーケンサー(next-generation sequencer; NGS)の本格的な普及に伴い、非モデル生物の農業生物についても、これまでとは比較にならないほど詳細なトランスクリプトーム解析(RNA-Se q)が可能な時代になってきた。例えば、ゲノムアセンブリ用プログラムのトランスクリプトーム版(de novo transcriptome assembly)を用いることで、目的の農業生物サンプルのRNA-Seqデータから、そのトランスクリプトームの配列集合が得られるだけでなくその発現量まで得られる。しかもその発現レベルのダイナミックレンジは、マイクロアレイなどの従来の実験手法から得られるデータよりも格段に広いといわれている。その一方で、RNA-Seqデータ特有の問題点もいくつか指摘されている。本講義では、RNA-Seqデータの特徴やマイクロアレイなどとの比較、そして比較トランスクリプトームデータ解析におけるRNA-Seq特有の問題点および講師らが開発中のデータ解析戦略について紹介する。

第90回

日時 平成23年11月11日(Fri.)15:00-16:00
場所 農学図書館ゼミナール室1
演者 勝間 進
(東大・院農、生産・環境生物学専攻)
演題 piRNAバイオロジー:カイコでの研究を例として
要旨 Piwi-interacting RNA (piRNA)は、siRNAやmiRNAに続く第3の低分子非コードRNAであり、その名の通りRNA結合タンパク質Piwiサブファミリーに結合する低分子RNAとして発見された。piRNAは生殖細胞特異的に存在するという点で、他の2種類の低分子RNA と異なっている。ショウジョウバエのPiwiサブファミリー遺伝子の変異体やノックアウトマウスを用いた遺伝学から、Piwiは生殖細胞系列の発生やトランスポゾンの転移抑制に関わっていることが示されている。しかしながら、Piwi/piRNA複合体の生理学的研究、および生化学的機能解析に関する直接的な研究例はあまりない。その主たる原因は、piRNAパスウェイを保持した培養細胞系がいずれの生物からも見つかっておらず、piRNAの生合成系の解析が困難である、ことにあった。私たちは、カイコの生殖細胞分化の研究過程で、piRNAパスウェイが完全に保存されたカイコ卵巣由来培養細胞(BmN4細胞)を世界で初めて発見した(Kawaoka et al., RNA, 2009)。また、最近、このBmN4細胞を用いてpiRNAがつくられる様子を試験管内で再現することに成功し、piRNAがつくられる過程を明らかにした(Kawaoka et al., Mol Cell, 2011)。本講義では、カイコを材料としたpiRNA研究のブレイクスルーとカイコオリジナルな生命現象に関する研究について概説する。

第89回

日時 平成23年11月2日(Wed.)10:15-12:00
場所 農学部2号館1階化学第三講義室(化3)
演者 黒川 顕 先生
(東京工業大学大学院)
演題 メタゲノム解析とその応用
要旨

第88回

日時 平成23年10月28日(Fri.)16:00-17:00
場所 農学図書館ゼミナール室1
演者 七夕高也 先生
(農業生物資源研究所)
演題 画像処理技術を活用したハイスループット形質評価技術
要旨 ゲノム解析技術の進歩によりゲノム情報を利用した遺伝子機能の解明や育種の研究が進み,多様な遺伝資源を利用した実験系統群など大量の系統あるいは個体の形質を効率良く評価する手法の開発が求められています.私たちは植物の個体レベルでの成長形質を対象とした計測のハイスループット化と高精度化を目的とした計測技術の開発を進めています.これまで手作業による多大な時間と労力をかけて実施されてきた器官の形状や伸長変化など,個体のあらゆる形状形質の詳細かつ定量的な計測の実現を目標とし,画像処理技術を活用した計測技術の開発に取り組んでいます.本セミナーでは,イネの発芽初期の成長解析を目的として開発を進めたイメージングシステムを中心に,これまで私たちが開発を進めてきた画像処理技術を生かした形質評価技術開発についての取り組みを紹介します.

第87回

日時 平成23年10月28日(Fri.)15:00-16:00
場所 農学図書館ゼミナール室1
演者 岩田洋佳
(東大・院農、生産・環境生物学専攻)
演題 作物改良のためのゲノミクス:ゲノムワイドアソシエーション解析とゲノミックセレクション
要旨 最近、次世代シークエンサーやDNAチップを用いて安価に高速に得られるようになった多検体のゲノムワイドDNA多型を用いて、作物の遺伝的能力の改良を加速する試みが進められている。育種集団を材料にゲノムワイドアソシエーション解析(GWAS)を行うことで、品種育成と候補遺伝子発見の同時進行が可能となる。候補遺伝子が分かれば、遺伝資源内に見られる候補遺伝子のアリル変異から、進化過程の推定や、新規優良アリルの同定、アリル特異的マーカーの開発等ができる。ゲノミックセレクション (GS)もゲノムワイドDNA多型の魅力的な利用法の一つである。GSは表現型を計測せずに選抜することを可能とし、品種改良のプロセスを高度に加速できる。ゲノミックスを活用した品種改良は食糧危機の解決に不可欠な技術であり、今後、集約的に研究を進める必要がある。本講義では、GWASとGSについて、その原理、必要となる統計手法、将来展望についてお話しする。

第85回

日時 平成23年10月25日(Tue.)16:30-18:00
場所 農学部2号館1階化学第二講義室(化2)
演者 中井 雄治
(東大・院農・機能性食品ゲノミクス寄付講座)
演題 ニュートリゲノミクスでわかること
要旨 ニュートリゲノミクスは、食品に対する生体応答を遺伝子発現変動として捉え、網羅的に解析することで、様々な機能性食品成分の作用メカニズムを探ったり、食品や栄養条件をプローブとして生体の恒常性調節メカニズムを探ったりする研究分野である。ゲノミクスという名前はついているが、その実体はトランスクリプトミクス、プロテオミクス、メタボロミクスといった網羅的解析手法を包含する、統合オミクス研究である。中でも、DNAマイクロアレイを用いたトランスクリプトミクスは、実験デバイスとしてもほぼ確立され、また、ここ数年でデータ解析手法も成熟してきており、ニュートリゲノミクスの中心的手法となっている。本講義では、バイオインフォマティクスの最新の解析手法を取り入れつつ、実験デザインを工夫することによって得られた、DNAマイクロアレイを用いた我々のグループの成果を中心にご紹介する。網羅的解析のメリットを最大限に活かすために、バイオインフォマティクスをどのように利用すべきか、主に実験研究者を想定した講義を行う予定であるが、情報系の研究者の方にも実験系の研究者の考え方をぜひ知っていただきたい。

第84回

日時 平成23年10月19日(Wed.)10:15-12:00
場所 農学部2号館1階化学第三講義室(化3)
演者 西 達也 先生
(東大・院農、株式会社ジナリス)
演題 次世代シーケンサーとその応用
要旨

第83回

日時 平成23年10月18日(Tue.)15:00-18:00
場所 農学部2号館1階化学第二講義室(化2)
演者 金井 好克 先生
(大阪大学大学院医学系研究科生体システム薬理学)
演題 網羅的比較定量プロテオミクスによる栄養素トランスポーターの変動解析
要旨 栄養素の消化管吸収は、吸収上皮の細胞膜上に存在する糖、アミノ酸、オリゴペプチ ド、脂肪酸、コレステロール、ビタミン、ミネラル等を特異的に輸送するトランス ポーター(輸送体)によって担われている。小腸上皮の栄養吸収機能は、食餌や腸内 環境により変動することが知られており、その分子機構の解明は、消化吸収の生理機 能やその病態変動の理解に重要であるとともに、機能性食品の作用機序の理解におい ても必須の情報となる。しかし、従来の研究手法には、栄養吸収に関わるトランス ポーターの総体を捉え、その変動を解析する技術が存在しなかったため、得られた情 報は断片的であり、全体像の評価は困難であった。これは、トランスポーターが多数 回膜貫通部位を持つ疎水性膜タンパク質であり、その生化学的扱いが困難であること が理由となっている。演者らは、定量的質量分析法を用いたプロテオミクスを適用し て、消化管上皮の栄養吸収を担うトランスポーターをタンパク質レベルで網羅的に解 析し、その変動を定量的に把握する手法を確立した。その解析例を提示し、この手法 について紹介する。

第82回

日時 平成23年10月14日(Fri.)16:00-17:00
場所 アネックスエンゼル研究棟講義室
演者 中川博視 先生
(農研機構・中央農研)
演題 作物生長シミュレーションモデルと遺伝情報
要旨 作物生長シミュレーションモデルは、環境条件が常に変動する圃場における作物の生 長と収量を記述し、推定・予測するために有効な手段である。モデルは、作物の環境 応答を表すために多くの品種パラメータを含んでいるので、品種パラメータと遺伝情 報を結びつけることができれば、個々の遺伝子の作物生産上の効果を変動環境条件の もとでシミュレートすることが可能となる。私たちは水稲の出穂期予測モデルのパラ メータをQTL解析し、モデルのパラメータの遺伝構造を明らかにするとともに、遺伝 子-環境相互作用型出穂期予測モデルを開発した。また、このようなモデルを使用し て出穂期関連QTLの遺伝子型の環境適応性をシミュレートできることを示唆した。本 講義では、一般的な作物生長シミュレーションモデルを概説するとともに、モデルの 品種パラメータを遺伝情報と結合させる試み、遺伝子型の環境適応性のシミュレー ションを紹介するともに、メカニスティックな遺伝子-環境相互作用モデル開発の可 能性について論じたい。

第81回

日時 平成23年10月14日(Fri.)15:00-16:00
場所 アネックスエンゼル研究棟講義室
演者 二宮正士
(附属生態調和農学機構)
演題 農業生産の現場で求められるインフォマティクス
要旨 現在の農業生産は,生産性,安全安心,高品質,環境保全,省資源,環境変動に対す る頑健性など,広い意味での持続性を総合的に実現する必要がある.そのためには, 社会科学的要素も含めて極めて多用な要素間の最適化が必要になり,情報科学的アプ ローチが必須となる. 問題は複雑で現状では,そのような総合的な最適化への取り組みはまだ緒に就いたば かりで,実際には部分的な問題解決をはかる意思決定支援システムという形で提供さ れているに過ぎない. 本講義では,以下を中心に現状での取り組み紹介した上で,現在の課題と今後の展望 について概観する.
1.農薬の取扱など農作業中のリスク管理,病害防除の最適化による減農薬,温暖化 に抗する適地適作などを支援するシステム
2.支援システムを運用するために必須となる,環境情報,生体情報,農作業情報の 効率的な収集を支える情報技術や,それらを効果的に管理運用するGIS等のデータ ベース
3.技術情報の効果的な伝達技術の一例として,非識字農民に対して,教育を受けて 識字の子ども達とコンピュータを活用して環境保全型農業技術を伝達する東南アジア での取り組み

第80回

日時 平成23年10月11日(Tue.)15:00-18:00
場所 農学部2号館1階化学第二講義室(化2)
演者 及川 彰 先生
(理化学研究所植物科学研究センター)
演題 農産物のメタボローム解析
要旨 農産物の中でもモデル生物にあたる、イネやトマトなどでは遺伝子解析などと同調して メタボローム解析も行われており、機能未知遺伝子の解明などの基礎研究から QTL解析などへの応用研究の報告がある。 一方で、遺伝子組み換え食品の代謝物全体への影響を調べるためにも メタボローム解析が用いられている。 さらに、上記したメタボロミクスの利点を用いて、 非モデル植物である身近な農産物へもメタボロミクスが応用されつつある。 また、メタボローム解析は様々な場面で応用が可能な技術である。 食品でも、品種開発、農業技術(栽培方法)開発、 加工・調理による影響の確認、劣化を防ぐ保存・輸送方法の開発など、 その応用範囲は広い。 地域農産物においても味を売りにするのか,機能性を前面に出すのか、 また加工品を重視するのかなどの違いはあるが、 その全てにメタボローム解析技術は応用できると言って過言ではない。 本講義では山形県の地域農産物へメタボロミクス技術を応用した研究例を紹介する。

第79回

日時 平成23年10月4日(Tue.)15:00-18:00
場所 農学部2号館1階化学第二講義室(化2)
演者 高垣洋太郎 先生
(東京女子医科大学医学部循環器小児科)
演題 食とシステムバイオロジー
要旨 生物学の20世紀は、メンデルの洞察(遺伝因子:heritability element)の再発見で始 まり、後半はWatson-Crickの二重螺旋とCrickのセントラルドグマ提唱を支柱に展開され た。個々の生物の遺伝子のACGT配列を解読することで設計情報が判り、その特性を判別で きるとの遺伝子決定論が主流となり、ゲノム解読計画が展開されたのである。しかし、20 01年ヒトゲノムの粗稿発表以来、ゲノムのACGT配列解読のおかげで、全く予想外の発見が 続いている。更に、解読されたゲノムACGT配列をベースに生物個体総体を俯瞰しようとOM ICSが提唱され、新しい技術展開が進行中である。21世紀に入り、生物学は、生物をダイ ナミックなシステムとして、遺伝と環境との相互展開を検討するSystem Biologyの時代と なったのである。
 人類は、おおよそ5~7万年前に一群がアフリカから脱出して、欧州やアジアの異なっ た環境に適応しつつ広がって来た。特に、ミトコンドリアDNAの変遷から、環境が各人 種の違いや特性を形成してきた形跡が推測されている。代謝や酸素呼吸活動の中心は、ミ トコンドリアにあるが、ミトコンドリアの16568塩基の配列(37遺伝子をコード)が、環境 の影響、とりわけ「食」の影響を色濃く反映しているのではないかと考えられている。他 方、第二次世界大戦の末期に、ナチス占領下のオランダでおこった「オランダ飢餓の冬」 では、当時の胎児に数十年後にその影響が明確に出た。最近の死因中のガンの増加は、「 食」の工業生産にあるとする解釈がある。このように「食」と健康状態との相互作用を示 すデータが出始めているが、どのように遺伝制御にかかわるか、より総体的に解析するシ ステムバイオロジーが求められているのではないかと考えている。

第78回

日時 平成23年3月9日(Wed.)13:00-15:00
場所 エンゼル研究棟講義室
演者 Prof. Jeffrey L. Thorne
(BRC, North Carolina State University)
演題 Back and forth between long-term and short-term genetic change
要旨 The first part of the talk concerns the assumption that sequences change over time according to a Markov process. This assumption is ubiquitous among models that are employed for interspecific evolutionary analyses. In some situations, there are good reasons to expect Markov behavior. In situations where the loss or fixation of a new non-neutral mutation is affected by existing non-neutral polymorphism, the Markov assumption can be violated. This has potential implications for the prospects of making accurate population genetic inferences about natural selection from interspecific sequence data. In the second part of the talk, I will discuss the possibility of employing genomic data from parents and offspring to assist with the inference of times since different species had a common ancestor. The hope is that next generation sequence data will be useful for estimating interspecific divergence times. This may be especially relevant to taxonomic groups with particularly incomplete fossil records.

第77回

日時 平成23年2月1日(Tue.)14:30-
場所 農学部7号館A棟716号(会議室)
演者 邱 国玉 先生(北京大学)
演題 Experimental Studies on the Effects of the "Conversion of Cropland to Grassland Program" on the Water Budget in the Semi-arid Region-A Case Study in Taibus Banner of Inner Mongolia
要旨 In the late 1990s, China promoted the "Conversion of Cropland to Forest and Grassland Program (CCFGP)" for national wide soil and water conservation, desertification control and environmental protection. Because most of the restored grassland is located in the semi-arid region, with small precipitation and huge potential evapotranspiration, water shortage is a major limiting factor for vegetation restoration. Meanwhile, different vegetations have different water use efficiency and water use strategies, unreasonable restoration measures even may aggravate the water shortage in semi-arid area. In this study, a typical CCFGP area, Taipus grassland, was selected as our study area. Field experimental was carried out in 2008-2009. The study sites included three grasslands restored respectively in 2000, 2004, and 2006, three native grasslands and one cropland. Meteorological parameters were measured by using three Bowen ratio systems, vegetation features and soil physical and chemical properties by conventional methods, soil evaporation by micro-lysimeter, soil moisture by gravimetric and TDR, and evapotranspiration by Bowen ratio. The main results were as follows:
1. As restored year increasing, numbers of plant species, genus and family reduced, while vegetation coverage increased; Annual herbs gradually replaced by perennial grass and mesophyte replaced by xerophyte.
2. Soil fertility in the native grassland was higher than other sites. Usually soil moisture was higher in the early spring and gradually fell down in the summer and then rose again in the autumn. In the vertical profile, soil water content changed obviously in 0-20 cm layer, while it was in 0-60 cm layer for the restored grassland. It was also found that, as restored year increasing, soil water content decreased gradually. However, because the higher transpiration, native grassland had the minimum soil water content.
3. Native grassland had a lower sensible heat flux (H) than the latent heat flux (LE) in the growing season. LE and H were approximately the same in the 2000 restored site, except in mid-growing season when LE was higher than H. In the 2006 restored site, LE and H were similar in the early growing season, and LE was higher than H in the mid-growing season, and H was higher than LE in the end of growing season; Native grassland had the largest daily evapotranspiration and 2006 restored site had the lowest evapotranspiration; After rainfall, the restored grassland had the greater soil evaporation rate and soil moisture consumption, while the trend was opposite in the dry season. The ratio of evaporation to evapotranspiration was less than 0.5 in most of the growing season.
4. Evapotranspiration of native grassland was greater than precipitation under the condition of plenty rainfall, while evapotranspiration was equal to precipitation for the restored sites. All sites suffered water shortage in the dry year. Vegetation consumed not only the precipitation in the same period, but also the water from winter snow and the deeper soil water. Under the drought condition, although native grassland had higher a evapotranspiration than that in the restored grasslands, the gap was decreased. Our results showed that the shorter time the restoration was, the worse the vegetation adapted to the drought.
In general, evapotranspiration had the greatest impact on the water budget of these restored lands. Vegetation types were the most important factor that affecting evapotranspiration. For the restored grasslands, despite the fact that water was sufficient, preventing more water consumption resulted from vegetation succession was an important issue for sustainable vegetation restoration.
KEY WORDS:Bowen-ratio, Conversion of cropland to grassland program, Evapotranspiration, Semi-arid region, Water budget

第76回

日時 平成23年1月19日(Wed.)13:00-15:00
場所 農学部6号館103号室
演者 今井隆志 先生(理化学研究所次世代計算科学研究開発プログラム)
演題 分子液体論(3次元RISM理論)に基づく新しいリガンドマッピング法
要旨 タンパク質―リガンド結合に対し、溶媒である水は、水素結合のようなミクロなものから 疎水相互作用のようなマクロなものまでマルチスケールな効果を及ぼす。リガンド結合の 理論予測において、そのような水の効果を如何にして計算に取り入れるかは最も重要な課 題の一つである。最近、我々は、水の効果を統計力学的に取り入れることのできる新しい リガンドマッピング法を提案した。その方法では、3次元RISM理論と呼ばれる液体の統計 力学理論を用いる。3次元RISM理論では、リガンド―水混合溶 液中のタンパク質に対し、 タンパク質表面の水およびリガンドの3次元分布を求めることができる。また、それに基 づき、溶液系でのリガンドの最確結合モードを求めることができる。本講演では、3次元R ISM理論について簡単な説明を行った後、それに基づくリガンドマッピング法について説 明する。また、ドラッグデザインへの応用、特にフラグメントベースのドラッグデザイン に向けた取り組みについて紹介する。

第75回

日時 平成22年12月15日(Wed.)15:00-17:00
場所 農学部2号館化学第二講義室(化2)
演者 浅川修一 先生(大学院農学生命科学研究科・水圏生物工学研究室)
演題 高等動物ゲノム解析の基本プロセス
要旨 最近では次世代シーケンサーの解読能力の向上が凄まじいため、地道なゲノム解析のプロ セスはあまり意識されない。次世代シーケンサーで読んでみて、はたとその限界に気づか されたという声もよく耳にする。現時点でもサンガー法でかつ整列化BAC・コスミド・Fos mid・P1・PACクローンを地道に解読したヒトゲノムシーケンスの完成度は他の生物を圧し ている。今後もしばらくの間は、新規生物の特定領域の解析や遺伝子探索等において、次 世代シーケンサーによるドラフトシーケンスを活用しながらも、遺伝子のかけらや何らか のマーカーを起点にゲノム断片を得て、サンガー法でシーケンシングを行ない、遺伝子構 造を決定するプロセスは随所で必要になるであろう。本講義では我々もその一部を担当し て完成させたヒトゲノム解析のプロセスを振り返り、遺伝子探索などのゲノム解析に関す る基本的なケーススタディを行ないたい。

第73回

日時 平成22年11月30日(Tue.)15:00-16:30
場所 農学部2号館化学第二講義室(化2)
演者 岩田洋佳 先生(大学院農学生命科学研究科・生物測定学研究室)
演題 食糧危機の回避に向けて ~ゲノム情報で品種改良を加速化する~
要旨 世界人口は2050年には90億を超えるとも推計されている。この人口をささえるには2050年 までに 70%の食糧増産が必要とされており、年あたりでは4400万トンの増産が必要とされ ている。最近4 0年間の食糧増産速度は3200万トン/年でほぼ一定であったことを考えると 、今後数十年間は従来比38%増の速度での増産が必要ということになる。このような増産を 限られた資源(土地、水、肥料など)のもとで達成するには、植物体そのものの生産能力 を大幅に向上させる他なく、そのためには、品種改良のスピードを高度に加速化するため の技術革新が不可欠となる。現在、品種改良の速度を向上させる技術として、ゲノム全体 に高密度に配されたDNAマーカー(ゲノムワイドマーカー)をもとに優良個体を選抜するゲ ノミックセレクションが注目を浴びている。ゲノミックセレクションでは、育成中の材料 にみられる目標形質(収量性や耐乾性など)とゲノムワイドマーカー間の関連をもとに、 「ゲノムワイドマーカーから目標形質を予測する」モデルを構築する。そして、この予測 モデルをもとにゲノムワイドマーカーに基づき「目標形質を実際に計測することなく」優 良な個体を選抜する。ゲノミックセレクションは、例えば、世代促進と組み合わせて利用 することで、品種改良のプロセスを大幅に効率化・加速化できる。本講義では、ゲノミッ クセレクションの原理、可能性、課題についてお話しする。

第72回

日時 平成22年11月24日(Wed.)15:00-18:00
場所 農学部2号館化学第二講義室(化2)
演者 福崎英一郎 先生(大阪大学大学院生命先端工学)
演題 メタボロミクスの定量的表現型解析への応用
要旨 トランスクリプトームおよびプロテオームは,ゲノム情報が実行される過程のメディアの 流れを表現する動的情報であるのに対し,メタボロームは,ゲノム情報実行の結果であり ,表現型と考えることができる.メタボロームを観測する方法に特に制限はないが,質量 分析は,感度,解像度にすぐれ,代謝物の定性・定量分析の手法として最も頻用されてい る手法である.我々は,定量性を重視した代謝プロファイリングを実施し,得られたメタ ボロームと表現型の相関関係を詳細に解析することにより,表現型発現機構推定に資する 代謝情報を得るとともに,表現型の定量的予測モデル開発することを主眼として研究を行 っている.本講義では,特に,メタボロームをフィンガープリント(指紋)に見立てて種 々の表現型を分類・予測する手法であるメタボリックフィンガープリンティングの応用に ついて解説する.応用例としては,「ゼブラフィッシュ初期発生胚の発生段階予測」,「 線虫の精子形成関連代謝物の推定」,「出芽酵母の寿命関連遺伝子の探索」,「バイオエ ンジニアリングへの応用」,「食品・生薬の品質予測への応用」等を紹介する予定である.

第71回

日時 平成22年11月10日(Wed.)15:30-17:00
場所 農学部2号館化学第二講義室(化2)
演者 石垣靖人 先生(金沢医科大学総合医学研究所)
演題 DNAマイクロアレイによる遺伝子解析とデータベース
要旨 DNAマイクロアレイが網羅的遺伝子発現解析の代表的プラットフォームとして一時代を築いてきたことに 異論はないが、すでに次世代あるいは次次世代シーケンサーが実用化された現在では、 トランスクリプトームを解析できるツールとして幅広く利用される時代に入ったといえる。 本講義では気軽に使えるツールとしてのDNAマイクロアレイ解析の応用とデータベースツールの 活用について解説すると共に、他のプラットフォームとの連携や実用性の限界について考えてみたい。 特にゲノム中の突然変異を検出するツールとしての活用について解説する予定である。

第70回

日時 平成22年10月20日(Wed.)15:00-18:15
場所 農学部2号館化学第二講義室(化2)
演者 高垣洋太郎 先生(東京女子医科大学)
演題 ゲノム情報と食による健康
要旨 20世紀は、19世紀にメンデルが洞察した遺伝因子 (heritability element)の解明に明暮 れ、個人のACGT配列を解読することで、予防医学や最適医療が可能とまで極論された。更 に、短絡的な遺伝子決定論で、遺伝子診断による予防的外科手術まで行われ、DNA診断用 チップや000ゲノム解読の開発競争に膨大な投資がなされた。  しかし、2001年ヒトゲノムプロトタイプの粗稿発表で、予想外の展開が始まっている。 ゲノムは、蛋白コード領域が約1.5%なのに、残りジャンクと呼ばれた部分も大部分機能し ており、また、ゲノムの約半分が繰返し配列で、Aluにいってはゲノムの約10%を占め、15 0万コピーもあるという。繰返し配列を起点としたゲノム断片のコピー数の変動(CNV)が検 出されつつあり、疾患との関連が取りざたされている。更に、ゲノムへの書込みや、親か らの刷込み等、エピジェネティクス(後生遺伝学)と呼ばれる分野が、やっと市民権を得つ つある。今世紀に入り、ゲノム学は、線型な静的な情報学から、遺伝と環境とのダイナミ ックな展開をも考慮する新しい地平に引き上げられつつある。  患者群から推定されてきた疾患原因遺伝子は、多くの場合浸透率が低く、Heritability is shallowといわれる。他方、疾患の原因として、食を含めた後生的活動や環境の影響 が指摘される様になってきた。代謝や酸素呼吸活動の中心は、細胞ではミトコンドリアに ある。ミトコンドリアは37遺伝子のみ持つが、ミトコンドリアの16560余の塩基配列が、 疾患傾向や寿命に影響を持つとの論文が多数ある。  今回の2コマの講義では、20世紀のゲノム学を概観し、現状はゲノム情報学が2セットの 約30億塩基を扱いあぐねている様子を見る。他方、エピジェネティクスは、食や環境がゲ ノム情報の発現を変更させるメカニズムを解析し始めている。ミトコンドリアの最近のデ ーター等も含めて、これからの方向を探ってみたい。

第69回

日時 平成22年8月31日(Tue.)16:30-17:30
場所 農学部2号館化学第三講義室(化3)
演者 富永大介 先生(産総研・生命情報工学研究センター)
演題 S-system による生化学ネットワークのシステム同定
要旨 生命現象とは、経時的に観測されるなんらかの変化である。その変化が定量的に観測される場合、一つの確立されたアプローチとして、微分方程式によるモデリングがある。 このアプローチは一般的には、対象によって適切な形の微分方程式モデルを選ばねばならないという難点があるが、S-system はそれを解決しようとする手法である。 1978年に M. Savageau によって提唱された S-system は、ある特定の形式のべき乗則モデルで、どんな系でも表現しようとするものである。 S-system はしたがって、パラメータの組で観測されたデータを表現するものであるが、そのパラメータはネットワーク構造としても解釈することができる。 そのため、十数年前から DNA マイクロアレイデータを対象として、遺伝子制御ネットワークの構造推定を行おうとする研究が行われている。 これは数理科学的には、モデルがデータにうまく合うようなパラメータの値を探索する「多次元非線形数値最適化問題」である。 S-system はパラメータの個数が非常に多いため、最適化も容易ではないが、ヒューリスティックな探索法、逐次的な最適化、ブーリアンネットワークモデルによる探索空間の限定などと言った工夫により、適用対象の拡大が図られてきた。 未だ実用に至っているとは言えないが、文献知識による初期構造推定、大規模な時系列観測、計算機資源の低廉化により、今後解決されていくだろうと考えられる。

第68回

日時 平成22年7月27日(Tue.)16:30-18:00
場所 農学部2号館化学第三講義室(化3)
演者 遠藤俊徳 先生(北海道大学)
演題 配列から機能情報を絞り出す - 酵素と受容体の分類と機械学習
要旨 DNA二重らせん構造発見から50年後の2003年、ゲノム配列完全解読の報告がなされた。 しかし、全遺伝情報が明らかになったというには、まだ多くの課題が残っている。 特に、配列から予測された遺伝子については、既知の機能モチーフが存在しない場合は機能推定困難で、高い割合が機能未知のままである。 そこでこれらの機能同定を目指し、配列の機能分類と、機械学習による特徴抽出を進めている。 その方法と、これまでの結果について紹介する。

第67回

日時 平成22年7月26日(Mon.)17:15-18:45
場所 農学部2号館化学第三講義室(化3)
演者 麻生川 稔(NEC、本ユニット特任教授)
演題 能動学習を用いた効率的な化合物スクリーニング法
要旨 創薬の探索で、標的とするタンパク質と結合する化合物スクリーニングする過 程に於いて、膨大な化合物に対して全ての化合物をハイスループットでスクリー ニングする方法(HTS)が、近年良く使われている。本発表では、能動学習法を用 いることによって、化合物を効率良く選択し実験を行うことにより、HTSに比べ て効率的スクリーニングが可能であることを示した。手法の検証に、創薬研究 で重要なG蛋白質共役型受容体(G-protein coupled receptor : GPCR)を標的と する化合物群を利用した。ヒット化合物が0.6%含まれる約20万種類の化合物を 用いたシミュレーション実験では、全体の20%の化合物の実験から、90%のヒッ ト化合物を選抜することができた。また、本手法で新規に発見した8化合物(1μ M濃度)についても、同様に得ることが可能であることを示した。 At the phase of lead chemical compounds search for drug discovery, both the combinatorial chemistry method and the high throughput screening (HTS) method are successfully utilized and discover several hit chemical compounds from huge chemical library. In this paper, we proposed an active learning method as an efficient chemical screening method and shown its effectiveness. To demonstrate system performance G-protein coupled receptor is chosen as a target protein. According to the computer simulation results, it is shown that one fifth of screening is enough for finding ninety percent of all hit compounds, from 200,000 compound library. By utilizing this method, we have found eight novel chemical compounds, and found that we could have found those compounds same efficiency as the computer simulation.

第66回

日時 平成22年7月22日(Thu.)16:00-17:30
場所 農学部2号館化学第一講義室(化1)
演者 Dr. Johannes le Coutre (Nestlé Research Center)
演題 Taste - the Metabolic Sense
要旨 Our senses serve us to detect the environment. With the chemical senses of olfaction and gustation the actual stimuli also enter the body and are being analyzed, much like in a chemical laboratory. Whereas olfaction largely is involved with our social and mating behavior the gustatory sense of taste is associated almost entirely to the intake of food. Often, the five basic taste modalities of sweet, sour, salty, bitter and umami are linked to an immediate behavioral response such as appeal (for sweet and umami) or rejection (for bitter). The research conducted in this field over the past decade not only detailed the molecular pathways and signal transduction elements for each modality – it also opened the door to understanding the metabolic and behavioral consequences leading to and resulting from gustatory stimulation. This lecture first will expand the set of known taste modalities to include taste mechanisms for fatty and metallic stimuli and in a second step we will discuss the embedding of each taste modality into a metabolizing and behaving human body.

第65回

日時 平成22年7月21日(Wed.)14:30-15:30
場所 農学部2号館化学第一講義室(化1)
演者 上野京子 先生(社団法人化学情報協会)
演題 バイオ分野の情報へのアクセス:付加価値型データベースの活用
要旨 バイオ分野の研究の広がりに伴いタンパク質や核酸の配列データが 飛躍的な数で増えている.これらのデータは多くの無料のサイトでも 検索が可能であるが,世界中で発表された論文や特許からある決められた ルールに基づき収集している有償のデータベースが製薬企業を中心に 活用されている.なぜ有償をあえて利用するか?有償データベースの 「付加価値」に注目し,解説をする.またこれらのデータベースを 使った低分子化合物とターゲットタンパク質との相互作用の 解析手法について紹介する.

第64回

日時 平成22年7月21日(Wed.)13:30-14:30
場所 農学部2号館化学第一講義室(化1)
演者 仲里猛留 先生(ライフサイエンス統合データベースセンター)
演題 データベースの統合的活用術:文献情報を中心に
要旨 2000年前後にゲノム解読が盛んに行われるようになってから、膨大な量のライフサイエンス系データが生み出されるようになり、最近では、次世代シーケンサにより、一度にテラバイトのオーダーのデータが出てくるまでに達している。 文部科学省ライフサイエンス統合データベースプロジェクトでは、今までにデータベースとして蓄積された過去の蓄積を有効活用するため、 ともすると死蔵されていくこれらのデータをユーザー(=研究者)が使いやすいように整えたりするなど、研究活動のためのインフラ整備の活動を行っている 。 今回は、特に文献情報をいかに使い倒すかを中心に、実演を交えつつデータベースの効率的な活用法を紹介する。

第63回

日時 平成22年7月12日(Mon.)15:15-16:45
場所 農学部2号館化学第三講義室(化3)
演者 広川貴次 先生(産業技術総合研究所・生命情報工学研究センター)
演題 タンパク質構造情報に基づく創薬分子設計
要旨 創薬現場において、リード化合物探索を計算機的手法により効率的かつ網羅的に行うことをin silicoスクリーニングと呼んでいる。 In silicoスクリーニングは、大きく①既知化合物構造に基づく手法と②相互作用する標的タンパク質の立体構造に基づく手法に分類される。 後者は、よく「鍵と鍵穴」の関係で例えられるもので、前者に比べ、活性のみならず選択性を考慮した化合物スクリーニングの実現が期待されている。 本講演では、標的タンパク質の立体構造に基づくin silicoスクリーニング手法について概説した後、現在取り組んでいる創薬分子設計のためのGPCRモデリング法の開発と、タンパク質‐タンパク質相互作用阻害剤の探索について紹介する。

第62回

日時 平成22年7月5日(Mon.)13:30-15:00
場所 農学部2号館化学第三講義室(化3)
演者 須山幹太 先生(京都大学)
演題 転写調節機構の解明に向けたゲノム情報解析からのアプローチ ― シス因子配列モチーフの同定と比較 ―
要旨 転写調節において、ゲノム配列上に存在するシス因子配列モチーフが重要な役割を担っている。 様々な動物ゲノム解析の進行にともない、比較ゲノム解析から、それらの配列モチーフを同定することが可能になってきた。 さらに、次世代シーケンサーを活用したChIP-seq法により、ある転写因子が結合する部位に関するデータが、ゲノムスケールで得られるようになった。 これらのデータの総合的な解析を通じ、シス因子配列について新たにわかってきたことを紹介する。

第61回

日時 平成22年6月28日(Mon.)15:15-16:45
場所 農学部2号館化学第三講義室(化3)
演者 石黒正路 先生(新潟薬科大学)
演題 タンパク質機能構造のモデリングと分子認識について
要旨 蛋白質の立体構造が次々と解明され、その構造と機能についてより詳細な解析が可能になってきている。蛋白質の機能の詳細を知るには、基質やリガンドの結合に伴う構造の変化との関係をどのように理解するかということが重要な課題となる。 β-ラクタマーゼ関連酵素とG蛋白質結合型受容体を例に、蛋白質の構造モデリングの役割について紹介する。

第60回

日時 平成22年6月25日(Fri.)14:00-16:00
場所 農学部2号館化学第一講義室(化1)
演者 神原秀記 先生
演題 研究開発の経験 -質量分析用イオン化技術、DNAシーケンサなど-
要旨 1.原子分子衝突あるいは電子線回折などの研究から生体関連物質用の新イオン化技術の開発へ
2.なぜDNAシーケンサの開発を始めたか
3.ヒトゲノム計画と大容量DNAシーケンサ
4.ポストゲノム時代の種々技術の発展
5.これから何が必要か
6.研究から得た種々の教訓について

第59回

日時 平成22年6月21日(Mon.) 15:15-16:45
場所 農学部2号館化学第三講義室(化3)
演者 伏信進矢 先生(本研究科応用生命工学専攻)
演題 グリコシダーゼの反応機構に立体構造解析とコンピュータ解析で迫る
要旨 セルラーゼ、アミラーゼなどのグリコシド結合を切断する酵素は多様な基質(糖質・糖鎖)の存在に対応して、膨大な種類のファミリーが存在する。その反応機構は基本的に酸・塩基触媒によるが、反応の進行にともなって、基質の糖の環の立体配座がどのように変化して行くかという点は非常に興味深い。このような研究は、高機能な酵素や、強力な阻害剤の開発につながると期待される。立体構造解析の情報を元にコンピュータ解析でグリコシダーゼの詳細な反応機構を調べた例を紹介する。

第58回

日時 平成22年2月2日(Tue.) 13:00-15:00
場所 農学部7号館A棟717号室(セミナー室)
演者 邱 国玉先生 (北京大学)
演題 An IR-based coefficient to screen plant environmental stress - concept, test and applications.
要旨 By introducing a reference dry leaf (a leaf without transpiration), a formerly proposed plant transpiration transfer coefficient (hat) was applied to detect environmental stress caused by water shortage and high temperature on melon, tomato, and lettuce plants under various conditions. Results showed that there were obvious differences between leaf temperature, dry reference leaf temperature, and air temperature. The proposed coefficient hat could integrate the three temperatures and quantitatively evaluate the environmental stress of plants. Experimental results showed that the water stress of melon plant under two irrigation treatments was clearly distinguished by using the coefficient. The water stress of melon plants under two irrigation treatments was clearly distinguished by using the coefficient. The water stress of a tomato plant as the soil dried under a controlled environmental condition was sensitively detected by using hat. A linear relationship between hat and conventional crop water stress index was revealed with a regression determination coefficient R2=0.97. Finally, hat was used to detect the heat stress of lettuce plants under high air temperature conditions (28.7°C) with three root temperature treatments (21.5, 25.9, and 29.5°C). The canopy temperature under these treatments was respectively 26.44, 27.15, and 27.46°C and the corresponding hat value was -1.11, -0.74, and -0.59. Heat stress was also sensitively detected using hat. The main advantage of hat is its simplicity for use in IR applications.

第57回

日時 平成22年1月15日(Fri.) 15:00-17:30
場所 農学部2号館2階 第1講義室(化1)
演者 今中忠行先生 (立命館大学、日本学術会議会員)
演題 超好熱菌の解剖
要旨 ①タンパク質、DNA、細胞膜の耐熱性分子機構 ②ポストゲノミクス研究の進め方

第56回

日時 平成22年1月14日(Thu.) 13:00-15:00
場所 農学部2号館1階 第2講義室(化2)
演者 細井文樹先生 (農学生命科学研究科)
演題 無線LANやGPS、Web―GISのセンシングや空間情報解析への利用
要旨 近年の情報通信技術(ICT)の発達は著しく、我々の生活様式や産業構造に大きな変化をもたらしている。本講義ではICT技術のうち、無線LAN、携帯電話、GPS、Web-GISに関する基本的な概念と原理について説明し、これらの技術を用いた農業分野への応用例を紹介する。さらに近い将来、導入が予定されている新しいICT技術の紹介や、ICT技術の発達に伴って生まれてきたWeb2.0やクラウドコンピューティングといった新しいWebの概念についても解説する。

第55回

日時 平成21年12月18日(Fri.) 15:00-17:00
場所 農学部2号館1階 第3講義室(化3)
演者 中西友子先生 (農学生命科学研究科)
演題 放射線計測による植物中の水と物質の輸送現象
要旨 生きた植物における水と物質輸送をどのように可視化してかつ定量的に解析できるかを紹介する。
特に可視化法の中でも光照射条件下での可視化が可能である放射線を利用したイメージング解析について述べる。

①水については中性子線による水特異的な分布、ならびにポジトロン放出核種による水そのものの動態解析を説明する。
植物体内では導管から常に多量の水が漏れだし、循環していることをどのように測定するかを示す。

②イオンや化合物:熱中性子放射化分析ならびに即発γ線分析による養分元素の特異的な分布、ならびにアイソトープを用いた動態の可視化分析について述べる。
放射線を利用して暗い条件下の根から明るい条件下の地上部にどのように養分元素が移動するか、また根周辺の水耕液中の養分元素の動態、ならびに土壌中の養分元素動態についてもどのようにリアルタイムで可視化して解析できるかを示す。
また根についてはミクロレベルのリアルタイム可視化解析についても述べる。

第54回

日時 平成21年12月11日(Fri.) 15:00-17:00
場所 農学部2号館1階 第3講義室(化3)
演者 富士原和宏先生 (農学生命科学研究科)
演題 国際単位系(SI)と単位記号表記法
要旨 国際単位系(SI)と単位記号の表記法に関する参考書等は容易に入手可能であり,そのような参考書を熟読することで,独学でも十分な知識を得ることができる。しかし現状では,理科系の技術者・研究者でも,技術文書や科学論文を作成する上で必要となるSIとSI単位記号の表記法に関する十分な知識を持っている者は少ない。
 本講義では,技術文書や論文を作成する上で必要となるSIとSI単位記号の表記法に関する内容を,とくに表記法に重点をおいて解説する。項目は次の通りである。
1. 物理量・単位・次元; 2. 基本量・組立量;
3. 基本単位・組立単位・単位系; 4. 国際単位系(SI);
5. SI接頭語; 6. SIに属さない単位;
7. SI単位記号の表記法

第53回

日時 平成21年12月10日(Thu.) 13:00-15:00
場所 農学部2号館1階 第2講義室(化2)
演者 牧野義雄先生 (農学生命科学研究科)
演題 光センシングによる食品・農産物の非破壊品質評価
要旨 食料は人類生存のために必須の物資であるが、直近の我が国の食料自給率は約40%と先進国としては最低レベルとなっている。

このため、大量の食料を海外からの輸入に頼っており、物流のグローバル化に伴う一次産品価格の変動や、日本では使用が禁止されているはずの有害化学物質の流入が、消費者の物心両面での大きな負担となっている。

一方、光を対象物に照射し、反射あるいは透過した光量を計測することにより、対象物に関する情報を得る、いわゆる光センシングは、地球環境の観測から電子部品の細かな傷の検出まで、あらゆる分野で応用されている、極めて汎用性の高い技術であり、最大の特徴は、非破壊かつ迅速なデータ取得が可能な点である。

本講義では、食料自給率向上につながる食品ロス低減と食の安全性確保に貢献する有害化学物質等の検出法を中心に、今や科学の眼と呼ぶべき光センシングを利用した食の安全保障に関する最近の研究成果を紹介する。

第52回

日時 平成21年12月9日(Wed.) 10:15-
場所 農学部2号館1階 第3講義室(化3)
演者 寺田 透 (アグリバイオインフォマティクス教育研究ユニット)
演題 分子シミュレーションによるタンパク質の機能解析
要旨 シミュレーションを日本語訳すると「模擬実験」と言われるように、分子シミュレーションを用いると、実際にはできないようなことも含めて、様々な手段を用いてタンパク質の機能を解析することができる。ここでは、分子シミュレーションの方法論のうち、分子動力学法を用いた、タンパク質の機能解析の事例を紹介する。

第51回

日時 平成21年12月3日(Thu.) 13:00-15:00
場所 農学部2号館1階 第2講義室(化2)
演者 露木 聡先生 (農学生命科学研究科)
演題 森林リモートセンシングとGIS
要旨 リモートセンシングは、比較的広大な地域の土地状況を把握することができる技術であり、地域の環境を監視するためには必要不可欠であるが、この技術だけではわからないこともある。リモートセンシング技術を利用する際に重要な留意点となる、この技術で何がわかり何がわからないのかについて、リモートセンシングの原理をもとに明らかにする。また、最近の森林リモートセンシング技術の発展と、森林地域に対する応用例について紹介する。

第50回

日時 平成21年12月2日(Wed.) 10:15-
場所 農学部2号館1階 第3講義室(化3)
演者 斎藤輪太郎先生 (慶應義塾大学環境情報学部)
演題 RNAとタンパク質間ネットワークのバイオインフォマティクス
要旨 分子生物学の実験技術の飛躍的な進歩によって、ここ10年間でゲノム、トランスクリプトーム、プロテオーム、インタラクトーム、メタボロームなどのゲノムワイドデータが大量に得られるようになり、また同時にこれらのデータの解析技術、すなわちバイオインフォマティクスの技術が開発されて次々と新規生物学的知見が発見された。これを踏まえ本講義では我々の研究グループが取り組んできた(1)トランスクリプトームからの非翻訳RNAの発見と、(2)インタラクトームデータの解析基盤の整備を題材として、オミックス科学が生まれて今日に至るまでの系譜およびその中でバイオインフォマティクスが果たしてきた役割について振り返り、今後バイオインフォマティクスはどうあるべきかを考えたい。

第49回

日時 平成21年11月25日(Wed.) 10:15-
場所 農学部2号館1階 第3講義室(化3)
演者 諏訪牧子先生 (産総研・CBRC)
演題 膜タンパク質のバイオインフォマティクス
要旨 新規膜タンパク質をバイオインフォマティクス技術を駆使して予測する手段や実例を述べる。また、立体構造決定の困難さから既に立体構造が決定された膜タンパク質をモデル構造として様々な構造解析を行ってきたが、最近構造決定された異なる生物種の構造がかなり異なることを示すとともに、適切なモデル構造を用いることの重要性などについて述べる。

第48回

日時 平成21年11月24日(Tue.) 13:00-15:00
場所 農学部7号館A棟7階717号室
演者 Dr. E. Heuvelink (Wageningen University)
演題 Modelling of greenhouse crops
要旨 Crop growth and development models allow integration of knowledge from different disciplines and are valuable tools in research, greenhouse climate control and crop management. A general dynamic crop growth model, with sub-models for light interception, photosynthesis, respiration, dry matter partitioning and leaf area growth is presented and discussed. The fraction of light intercepted primarily depends on leaf area index and light extinction coefficient. Daily crop gross assimilation rate is computed by integration of leaf assimilation rates at different heights in the crop canopy. Crop growth results from daily crop gross assimilation rate minus maintenance respiration rate, multiplied by a conversion efficiency. Dry matter partitioning is simulated, based on the sink strengths of the plant organs. The sink strength of an organ is quantified by its potential growth rate, i.e. the growth rate at non-limiting assimilate supply. Organ appearance rate and development rate are functions of temperature. Fruit abortion is simulated as a function of source and sink strength in the plant. Specific leaf area is described as a function of season only. There is no direct influence of dry matter production on dry matter partitioning. Simulation results for fruit vegetables and ornamentals are presented and the influence of young leaf removal on light interception, partitioning and yield is presented as a case study.

第47回

日時 平成21年11月20日(Fri.) 13:00-14:20
場所 農学部2号館1階 第3講義室(化3)
演者 門田幸二 (アグリバイオインフォマティクス教育研究ユニット)
演題 マイクロアレイデータ解析結果の正しい?!解釈について
要旨 マイクロアレイデータ解析講習会の前半部分の講義を公開セミナーとして行う。講師が普段行っているデータ解析の戦略や結果の解釈についての考えを述べる。

第46回

日時 平成21年11月19日(Thu.) 15:15-16:45
場所 農学部2号館2階 第1講義室(化1)
演者 松山 旭先生 (キッコーマン株式会社・研究開発本部)
演題 しょうゆ麹菌ゲノム情報のしょうゆ醸造への応用可能性
要旨  現在の味噌や醤油は、東洋において自然発生的に生 まれてきた保存食がそれぞれの時代の食文化と相互関係を持ちながら改良されてできてきた と考えられている。日本では、中国から奈良・平安時代までに伝わった「醤」が長い年月をかけ 発達し、江戸時代に現在の醤油の原型が完成した。現在の醤油醸造は基本的には江戸時代の醤 油造りを継承しており、複数の微生物との対話を科学的に解明しながら、巧みにその機能を利 用して行われている。この醸造に使われる微生物の中でもっとも重要な役割を果たしているのが 麹菌である。我々の先祖が経験的アプローチ・科学的アプローチを通して選び抜いてきた Informationが刻まれた麹菌の全ゲノム解析が2005 年までに終了した。得られた膨大な情報からの特性解 析はその著に着いたばかりである。
 本講義では、醤油の醸造工程をそこで働く微生物の 作用を概説し、麹菌のゲノム解析から得られた情報を利用して行った研究から明らかになった麹菌 の安全性及び将来に向けた麹菌育種の可能性について紹介したい。

第45回

日時 平成21年11月19日(Thu.) 13:30-15:00
場所 農学部2号館2階 第1講義室(化1)
演者 古賀仁一郎先生 (明治製菓株式会社・食料健康総合研究所機能研究センター)
演題 植物・微生物研究分野での遺伝子情報の利用
要旨 遺伝子情報の利用により生命科学は急速な進歩を遂げている。しかしながら、遺伝子情報は万能ではなく、時によっては古典的な技術に頼らなければならない場合もある。本セミナーでは演者が関わった以下の3つの研究例を紹介し、現状における遺伝子情報の重要性と限界、そして将来展望について述べる。
1.根圏微生物の生産するインドール酢酸(IAA)の生合成経路
IAA生合成経路の鍵酵素であるインドールピルビン酸デカルボキシラーゼ (indolepyruvate decarboxylase) の機能解析と根圏微生物の生産するIAAの役割
2.繊維用セルラーゼの産業上の利用
繊維加工用セルラーゼとして使用される糸状菌由来ファミリー45エンドグルカナーゼ (family 45 glycoside hydrolase) の機能解析と産業用酵素としての開発
3.植物の病害抵抗性機構
イネの病害抵抗性誘導物質として単離されたいもち病菌由来スフィンゴ脂質や糞便由来胆汁酸についての研究動向と植物病害抵抗機構を解明する手段としての将来展望
 

第44回

日時 平成21年11月19日(Thu.) 13:00-15:00
場所 農学部2号館1階 第2講義室(化2)
演者 米川智司先生 (附属農場)
演題 プレシジョン・ファーミングにおける情報処理
要旨 プレシジョン・ファーミング(Precision Farming, 精密農法)は、Precision Agriculture(精密農業)やSite-Specific Crop Management(局所管理)とも呼ばれ、経済・環境両面での持続可能な農業手法(Sustainable Agriculture)を具現化する注目すべき一手法である。
本手法は、作物・土壌・気象・収量に関わる多様な情報をモニタリングする各種センサの開発に加え、取得データを空間情報処理(Spatial Data Analysis)によって補間し、GPS(Global Positioning System, 全地球測位システム)およびGIS(Geographic Information System, 地理情報システム)を利用してマップ化(Mapping)する。
そして、これらの多重構造マップを、意思決定システム(Decision Support System)によって最適局所管理用の処方箋マップを作出し、これに基づいた可変制御機械による作業を行うことによって成り立っている。
講義では、わが国と欧米諸国での耕作面積や農業機械の規模の違いを意識させながら、プレシジョン・ファーミングを概観するとともに、空間情報処理における主要な補間法(Interpolation Methods)である、IDW(Inverse Distance Weighted, 逆距離加重)法・スプライン(Spline)法・クリギング(Kriging)法の特徴を踏まえながら、クリギング(Kriging)法によるマッピング手法について解説する。 

第43回

日時 平成21年11月18日(Wed.) 10:15-
場所 農学部2号館1階 第3講義室(化3)
演者 川島秀一先生 (東大・医科研)
演題 生命システム情報統合データベースKEGGの紹介
要旨 KEGG (Kyoto Encyclopedia of Genes and Genomes) は、ゲノム情報、パスウェイ情報、化合物情報などの、生命システムの知識を統合したデータベースである。遺伝子、生体内化合物、薬などの情報が、細胞内パスウェイ(PATHWAYデータベース)上や、タンパクファミリーなどの階層的(BRITEデータベース)な形式で統合されている。現在、データのタイプ別に15以上のデータベースが統合されており、ゲノムネット(http://www.genome.jp/kegg/)上の検索サービスにより様々な方法でのアクセスが可能となっている。本セミナーでは、KEGGを構成するデータベース群の概要と、具体的に利用する方法について解説する。

第42回

日時 平成21年11月16日(Mon.) 18:00-20:00
場所 農学部7号館B棟2階231/232講義室
演者 平田泰雅先生 (森林総合研究所)
演題 ポスト京都議定書における森林リモートセンシングの役割 -発展途上国での森林減少抑制のためのモニタリング技術ー
要旨 地球規模での気候変動が指摘される中、森林の炭素固定機能が地球温暖化の緩和に果たす役割が期待されている。樹木は成長するときに、温室効果ガスの一つである二酸化炭素を吸収して、炭素をその体内に固定する。従って、健全な状態に森林を管理して成長を促すことにより、より多くの炭素を大気中から取り除くことができる。一方、アブラヤシやトウモロコシのプランテーション造成のために森林が伐り開かれると、それまで蓄えてきた炭素の大部分を二酸化炭素として大気中に放出することになる。発展途上国における森林減少からの二酸化炭素の排出は、人為起源の温室効果ガス排出の約2割を占めると言われている。従って、森林減少に歯止めをかけることが温室効果ガスの削減に大きく寄与することになり、国際的な取り組みが強く求められている。
 このように森林は気候変動の議論の中では、二酸化炭素の吸収源とともに排出源としても取り扱われる。森林の成長を促進することにより二酸化炭素の吸収量を増加させ、森林減少を抑制することにより二酸化炭素の排出量を軽減させるには、森林の状態とその変化を正確に把握し、適正な森林管理を実施する必要がある。しかしながら、地域レベルあるいは国家レベルといった広域での森林の状態とその変化を把握するには多大な労力を必要とする。人工衛星や航空機に搭載されたセンサーによるリモートセンシングは、広域での森林の状態を把握するのに適した技術であり、とりわけこれまでの森林情報が十分に得られない発展途上国における森林減少を把握するために有効な手段であると考えられている。そこでここでは、空から森林の現状とその変化をモニタリングする国際的な取り組みと、二酸化炭素の吸収源及び排出源として森林を観測する新たな技術について紹介する。

第41回

日時 平成21年11月12日(Thu.) 16:00-18:00
場所 農学部2号館1階 第2講義室(化2)
演者 芋生憲司先生 (農学生命科学研究科)
演題 生物機械とセンシング
要旨 農業機械は農作業の省力化を目的として開発されたが,最近では高精度農業機械を使った精密農業の実施による環境負荷低減の役割も重視されている。また国内では後継者不足の問題と,農業の抵コスト化の要請からセンシング技術,IT技術,ロボット技術を駆使した農作業システムの開発が重要課題となっている。講義では,まず農作業の機械化の歴史を紹介し,機械化の効果を説明する。次に,現在開発されている農業用ロボットの事例を紹介し,農業用ロボットに必要なセンシング技術について述べる。

第40回

日時 平成21年11月12日(Thu.) 13:30-
場所 農学部2号館1階 第3講義室(化3)
演者 田中隆治先生 (サントリー、金沢大学、アグリバイオインフォマティクス教育研究ユニット)
演題 バイオインフォマティクスは食の機能解析にどのように役立つのか
要旨 弊社は長年、発酵技術、微生物培養技術、微生物管理、育種技術を基盤技術とし、商品管理、商品開発をおこなってまいりました。さらに、1978年より医薬事業の研究開発を開始しする事により、その基盤となる技術の拡大を計ってまいりました。特に伝統的なバイオ技術と新しい遺伝子工学を中心とした新バイオ技術を医薬研究開発の基本とし、また品質管理や酒類、食品開発のなかで培われた、分析、分離技術を生かした、バイオマス資源からの天然生理活性物質の単離、そしてそれら化合物の商品化への応用、更には精製分離された化合物のバイオリアクタ-を利用した加工、転換技術の獲得は、医薬品を含む弊社で生産する商品の幅を広げ、他社と差別化の出来る商品が出来てまいりました。更に、この研究開発基盤の広がりは、健康食品事業、花、環境事業という新しい事業展開のきっかけにもなってまいりました。
本日は医薬品開発、新しい食品市場として大きく期待のかかる健康食品開発、遺伝子組み換え植物、青いバラ開発において、また酒類の開発において先端バイオテクノロジーをどのように活用してきたのか、特にポストゲノムサイエンスで重要な考え方、技術として期待されているバイオインフォーマティクスをどのように活用、あるいは利用しようとしているのかを話してみたい。
1. 健康食品の市場と背景
2. 生理機能を有する天然物化合物の構造と活性相関からセサミン開発
3. ビール酵母のゲノム解析と新しいビール発酵技術へのチャレンジ
4. 味覚機能の解析と食品開発
5. 青いバラ開発ともっと青いバラ開発
6. ポリフェノールの科学
について経験談を話してみたい

第39回

日時 平成21年11月11日(Wed.) 10:15-
場所 農学部2号館1階 第3講義室(化3)
演者 河野秀俊先生 (日本原子力研究開発機構)
演題 タンパク質科学における計算機シミュレーション
要旨 立体構造をもとに、protein-DNA interaction, protein design, structure determination, free energy calculation (簡単に)etc について話す予定である。

第38回

日時 平成21年11月5日(Thu.) 13:00-15:00
場所 農学部2号館1階 第2講義室(化2)
演者 大政謙次先生 (農学生命科学研究科)
演題 オランダにおけるグリーンハウスオートメーションと環境対策
ー農業現場における工場化、ICT化、そして、温暖化対策ー
要旨 オランダは九州ほどの小さな国土ながら、農産物の輸出では米国に次ぐ輸出額がある農業国である。グリーンハウスに代表される施設農業はオランダ農業の代表であり、花卉や野菜を中心に、栽培から収穫、出荷まで、オートメーション化された大型施設で生産され、日本における植物工場の見本とされる。また、フード&グリーンサプライチェーンのICT化も進んでいる。一方、環境対策でも、EUの共通農業政策下で、グリーンハウス内の栽培養液の排出が規制され、循環式養液栽培システムが確立している。最近では、農薬の使用を減らし、また、温暖化対策のために、外部との換気を少なくした半閉鎖型のグリーンハウスや、エネルギーを創出し、地域で利用する閉鎖型のグリーンハウスの開発研究も進んでいる。しかし、一方では、安い労働力の国との競争や規模拡大に伴う問題もある。ここでは、最新のビデオや写真を用いて、オランダのグリーンハウスオートメーションと環境対策について紹介するとともに、我が国におけるこの分野の将来について考える。

第37回

日時 平成21年10月28日(Wed.) 10:15-
場所 農学部2号館1階 第3講義室(化3)
演者 福西快文先生 (産総研・バイオメディシナル情報研究センター)
演題 計算機による薬物の探索
要旨 計算機上で医薬品の探索を行う手法は、主に、標的蛋白質の立体構造をもとに、それに結合しうる化合物を探索する structure-based in silico screeningと、既知活性化合物の類似化合物探索を行う ligand-based in silico screeningの2つがある。ドッキングソフトDOCKが開発されて以来、約50種類のソフトが開発されてきた。多くのドッキングソフトは蛋白質―化合物複合体構造既知の場合、 50‐60%の確率で精度2Åで複合体構造を再現できる。タンパク質の立体構造に、化合物が結合するかどうかを計算により判定することで、仮想的な化合物データベースから薬物を探索する「in silico薬物スクリーニング」は実用レベルである。
しかし、スクリーニング計算が、実験より有効となる割合は、約50%に過ぎない。複合体構造を再現することと、活性化合物を予測することは別の課題であり、万能なソフトウェアは存在せず、できるだけ多くの標的に適用可能なスクリーニング手法の開発と、標的ごとに特化した高精度のスクリーニング手法の開発が重要であると考えられる。
近年、様々な情報処理技術によってスクリーニング計算は、その信頼性を高め、有効な創薬研究手段になってきている。

第36回

日時 平成21年10月21日(Wed.) 10:15-
場所 農学部2号館1階 第3講義室(化3)
演者 門田幸二 (アグリバイオインフォマティクス教育研究ユニット)
演題 トランスクリプトームデータの解析戦略とその周辺(仮題)
要旨 DNAマイクロアレイやDNAフィンガープリンティングなどによって得られるトランスクリプトームデータを効率的に解析する上で、バイオインフォマティクスは欠かせない技術の一つである。本セミナーではトランスクリプトーム研究を行う上で頻用される一連の解析手法を紹介する予定である。

第35回

日時 平成21年10月8日(Thu.) 13:30-
場所 農学部2号館2階 第1講義室(化1)
演者 荒井綜一先生 (東京農業大学教授)
演題 科学を基盤とする医食同源と機能性食品―その未来像をさぐる
要旨 1980年代に日本で始まった機能性食品研究は、現在世界中に受け入れられ、食品研究の中心となっている。 2000年代に入り、機能性食品研究はバイオインフォマティクスを取り入れ、ニュートリゲノミクスとして発展してきている。日本の伝統的な食品研究が基盤となり、ゲノミクスをはじめとする先端科学を取り入れることによって、生活習慣病の食品による予防や、個の栄養の実現が期待される。また、さらに味覚・嗅覚の研究を取り入れた機能性食品研究の未来像について述べる。

第34回

日時 平成21年9月25日(Fri.) 16:00-17:30
場所 農学部2号館1階 第2講義室(化2)
演者 Sue-Joan Chang先生 (台湾成功大学、東京大学大学院農学生命科学研究科)
演題 Development of Functional Food: Taking the Functionality of Toona Sinensis as an Example
要旨 張教授は、プロテオミクス等を活用した食品の機能性解析を進めておられます。今回は、先生の多様な研究分野の概略をご紹介いただきますが、特にToona Sinensis(香椿)抽出物の抗酸化や生殖改善機能についての実例を中心にお話しいただく予定です。

第33回

日時 平成21年7月2日(Thu.) 15:30-17:00
場所 農学部2号館2階 第1講義室
演者 別府輝彦先生 (東京大学名誉教授、日本学士院会員)
演題 「微生物におけるゲノムと遺伝子の進化 ~発酵学を通して見たその断面~」
要旨 http://jsbba.bt.a.u-tokyo.ac.jp/09kikaku/09kikaku3-houkoku.html

第32回

日時 平成21年1月15日(Thu.) 1・2限(13:30-16:45)
場所 農学部2号館2階 第1講義室
演者 長村吉晃先生 (農業生物資源研究所基盤研究領域)
演題 「イネゲノム研究(Wet&Dry)におけるバイオインフォマティクス」
要旨 イネゲノム研究が本格的に開始されたのは、1991年10月である。第1期はESTの大量解析に始まり、DNAによる遺伝地図作成、YACによる物理地図作成が行われた。第2期の1998年からはイネゲノム約400Mb の全塩基解読を目標にさらに積極的に研究が進められ、6年後の2004年に全ゲノムが解読・公開された。現在、イネゲノム研究で得られたこれらのゲノム情報や研究リソースは国内外の研究者に提供されている。本セミナーでは、イネゲノム研究で使われた研究戦略、利用されたバイオインフォマティクス技術及び作成されたデータベース群、今後の研究の方向性について紹介する。

第31回

日時 平成20年10月30日(Thu.) 1・2限(13:30-16:45)
場所 農学部2号館1階第2講義室(化2)
演者 二階堂雅人先生 (東京工業大学生命理工研究科)
演題 「DNA情報を用いた鯨類の分子系統樹構築」および「DNAから探るシクリッドの爆発的多様化」
要旨 地球上に現存する生物は、46億年という途方もなく長い歴史の中で、日々変わりゆく多様な地球環境に適応しながら生き延びて来たグループである。現在、150万を超えるとも言われるその生物種は、それぞれが形態的にも生態的にも驚くほど多様で、実に興味深く魅力的である。この生物多様性獲得の道筋やそのメカニズムを明らかにするのが進化・系統学である。本セミナーの前半では、既存のDNA配列比較とは異なり、レトロポゾンの一種であるSINEのゲノムへの挿入イベントを指標とする分子系統樹推定法について説明し、それにより明らかとなった鯨類の系統関係について話す。後半には我々が現在進めているシクリッド類(タンザニアの湖に住む淡水魚)の嗅覚(受容体遺伝子群)と種分化に関する研究を中心として、インフォマティクスとは対極に位置するタンザニアでの野外調査についても話す。本セミナーに参加される若い学生のみなさんには、ダイナミックな進化研究の醍醐味を感じていただき、近い将来にみなさん自身が研究に打ち込む姿を思い描いていただければ幸いである。

第30回

日時 平成20年10月23日(Thu.) 16:45-18:15
場所 農学部2号館1階第2講義室(化2)
演者 舟橋 啓先生 (慶應義塾大学理工学部生命情報学科)
演題 「システムバイオロジーの最前線定量生物学から計算生物学まで(2)
計算生物学 ~シミュレーション技術と標準化~」
要旨 生命現象を司る動作メカニズムの理解には、対象とする生命現象に関わる分子の特定、及びそのダイナミクスを理解する必要がある。一般的にダイナミクスは遺伝子制御、シグナル伝達、代謝等、分子間反応として表現され、ダイナミクスの特性の記述には反応方程式が用いられる。反応方程式の記述は大別して(1)分子濃度を記述した常微分方程式、(2)分子濃度の空間的分布を記述した偏微分方程式、(3)分子数のゆらぎを考慮した確率モデルに分類され、これら異なる記述方法は適用する生命現象に依存する。生命のシステムレベルでの理解のためには、上記アルゴリズムを用いたモデル化(シミュレーション)の他、理論解析、新たな実験手法の開発などの融合的研究が必須であり、これをサポートする計算機基盤が研究の成功に大きな影響をもたらす。中でもモデル化、シミュレーション、解析を行う一連の過程をサポートするソフトウェア基盤は非常に重要な位置を占める。これらソフトウェア群はきわめて広範な技術を必要とし、かつそれらが連動して利用できる必要がある。この状況を解決するアプローチが、標準化とプラットフォームの提供によるソフトウェア基盤構築である。モデル表現の標準を提供することで、ソフトウェア間でのモデルの共有・蓄積が可能となり、オープンなプラットフォームによって、モデル構築と解析モジュールの協調的な開発、連動を可能にする。本講演では、シミュレーション技術及びソフトウェア間でのモデルの共有を目的とした標準化技術(SBML, SBGN)、これら標準化技術を採用したソフトウェアであるCellDesignerについて紹介する。

第29回

日時 平成20年10月23日(Thu.) 15:00-16:30
場所 農学部2号館2階第1講義室(化1)
演者 小林徹也先生 (東京大学生産技術研究所)
演題 「システムバイオロジーの最前線定量生物学から計算生物学まで(1)
定量生物学 ~慨日リズムの光応答性を例に~」
要旨 近年立ち上がったシステムバイオロジーにおいて、従来の分子生物学的方法論を補完する新しい生命科学の方向性を模索する試みが行われてきた。このような試行錯誤的な試みの結果、システムバイオロジーの最前線において、いくつかの具体的な研究の方向性が明らかになっている。「定量的なデータに基づいた生命科学」はこのような方向性の1つである。本講演では、このような定量的なデータに基づく研究の例として、我々が最近行った慨日リズムのSingularity現象(慨日リズムの停止現象)のメカニズムを細胞レベルで解明した研究を紹介する。この研究では、定量的な測定・摂動実験と画像・データ解析、そして数理モデルとを有機的に結びつけることによって、現象の特性を定量的に明らかにし、分子の同定とは違う形による現象のメカニズムの解明に成功している。そしてこの我々の研究などをたたき台として、定量的な生物学の今後の展開と、必須技術などについて議論したい。

第28回

日時 平成20年10月2日(Thu.) 1・2限(13:30-16:45)
場所 弥生講堂アネックス 研究棟アネックス1(セイホクギャラリー)[農学部正門近くの新しい建物内1階]
演者 福西快文先生 (産総研・バイオメディシナル情報研究センター)
演題 「計算機による薬物の探索」
要旨 計算機上で医薬品の探索を行う手法は、主に、標的蛋白質の立体構造をもとに、それに結合しうる化合物を探索する structure-based in silico screeningと、既知活性化合物の類似化合物探索を行う ligand-based in silico screeningの2つがある。ドッキングソフトDOCKが開発されて以来、約50種類のソフトが開発されてきた。多くのドッキングソフトは蛋白質―化合物複合体構造既知の場合、 50‐60%の確率で精度2Åで複合体構造を再現できる。タンパク質の立体構造に、化合物が結合するかどうかを計算により判定することで、仮想的な化合物データベースから薬物を探索する「in silico薬物スクリーニング」は実用レベルである。
しかし、スクリーニング計算が、実験より有効となる割合は、約50%に過ぎない。複合体構造を再現することと、活性化合物を予測することは別の課題であり、万能なソフトウェアは存在せず、できるだけ多くの標的に適用可能なスクリーニング手法の開発と、標的ごとに特化した高精度のスクリーニング手法の開発が重要であると考えられる。
近年、様々な情報処理技術によってスクリーニング計算は、その信頼性を高め、有効な創薬研究手段になってきている。

第27回

日時 平成20年6月19日1・2限(13:30-16:45)
場所 農学部2号館2階第1講義室(化1)
演者 河野秀俊先生 (日本原子力研究開発機構)
演題 構造バイオインフォマティクスによるタンパク質-DNA間の分子認識(前半)と X線自由電子レーザーを利用した単粒子構造解析に必要な理論(後半)
要旨 (前半)タンパク質-DNA間の分子認識は、転写、複製といった生物の基本的なプロセスにおいて重要な相互作用である。本講義では、立体構造バイオインフォマティクスの観点から、その相互作用おいてどのように特異的な分子認識が実現されているかについて述べる。
(後半)国家基幹技術プロジェクトとして播磨に建設中のX線自由電子レーザーは、非常に強いコヒーレントな光を出す。この夢の光を使えば、結晶を必要としない、単粒子での立体構造解析が期待される。そのために必要な理論、条件について述べる

第26回

日時 平成20年6月12日2限(15:15-16:45)
場所 農学部2号館1階第3講義室(化3)
演者 有田正規先生 (新領域創成科学研究科)
演題 Wikiによるフラボノイドのデータベース
要旨 計算機科学におけるデータベースは通常、関係モデルに基づいた関係データベースを指す。それに対し、生物学の分野では巨大なテキストファイルであることが多い。テキストファイルは管理が容易で矛盾を含められる一方、効率の良い検索ができない。この欠点を補うため、テーブル形式をサポートしたWikiシステムを提案する。具体例としてMediaWiki上に植物二次代謝産物の代表例であるフラボノイドのデータベースを構築した例を紹介する。テーブル形式をサポートすることで関係演算を施すことが可能になり、さらにメンテナンスの容易さなどWikiの良さも受け継ぐことができる。

第25回

日時 平成20年5月22日 16:00-19:15
場所 農学部2号館1階第3講義室(化3)
演者 木村英一郎先生 (味の素株式会社)
演題 ライフサイエンス分野でのバイオインフォマティクスの産業応用
—高温耐性アミノ酸生産菌の比較ゲノム解析からプロテオミクスを用いた臨床バイオマーカー開発まで—
要旨  当初バイオインフォマティクスは分子生物学と情報技術の融合領域の研究としてデータベース構築、シミュレーション技術開発、システム生物学などの基礎・基盤的な取組みがなされてきたが、近年はゲノム創薬を始め、産業応用の様々な局面で不可欠な技術となっている。本セミナーでは、演者が関わった以下の2つの具体例を紹介し、バイオインフォマティクスの産業応用上の重要性を紹介する。
1.高温耐性アミノ酸生産菌Corynebacterium efficiensの全ゲノム解析と類縁菌のC.glutamicumとの比較ゲノム解析による、進化的観点からの酵素の耐熱化機構の解析
2.米国スタンフォード大学医学部での産学連携による、ハイスルループット・プロテオミクス技術を用いた動脈硬化症診断用の新規バイオマーカー開発と臨床への展開
 また、演者が内閣府(総合科学会議担当)で我が国のライフサイエンス分野の科学技術政策を担当した経験から、我国の科学時術推進戦略における、融合領域研究の重要性と期待について、政策的な観点から紹介する。

第24回

日時 平成19年11月22日13:30-16:45
場所 農学部2号館2階第1講義室(化1)
演者 上田賢志先生 (日本大学生物資源科学部)
演題 微生物の見えない集団性への挑戦
要旨 遺伝的に単純で最も下等な生物とされる微生物にも、驚くべき集団行動が認められることは一部の特異な菌において古くから観察されている。現在では、特に細菌において特異的に作用する化学信号の同定がすすみ、それがどのような遺伝メカニズムを通じて集団性を支配しているかについて具体的な知見が得られるようになってきた。また一方で、PCR法の確立以来、分子生態学的手法を基礎にした生態調査が飛躍的にすすみ、自然環境中での微生物群集の挙動が実験室内での純粋培養系におけるそれと大きく異なることに多くの示唆が得られるようになった。一見独立した研究分野である①単一の微生物細胞の挙動に関する基礎分子生物学、②微生物の複合群集構造の生態学、ならびに③応用微生物学における難培養性の問題は、実は互いに深く関連するものであり、それらに関する包括的な理解の上に新しい概念と研究戦略を打ち立てていくことが、これからの地球科学全体における一つの主要な流れを形づくると考えられる。
本セミナーでは、上記の諸分野におけるいくつかの知見や研究手法について具体例をもとに解説し、それらの目に見えない深い関わりについて問題提起をしてみたい。そこに見つかる諸般の問題の解決に、バイオインフォマティクスが今後いかに有効に活用できるか。それを若い研究者の方々が考えるための一助となれば幸いである。

第23回

日時 平成19年11月15日17:00-18:30
場所 農学部2号館1階第3講義室(化3)
演者 吉川敏一先生 (京都府立医科大学/アグリバイオ人材養成ユニット)
演題 食品機能と疾病予防
要旨 ヒトゲノム解析は予想以上のスピードで進展し、21世紀に入るとともに、ヒトの遺伝子構造のほぼ全容が明らかにされた.ヒトゲノムがもつ3?4万個の遺伝子のうち約半数は機能不明のタンパク質をコードするとされており.ポストゲノムの生命科学においてはこれらの未知遺伝子がコードするタンパク質の機能解析が課題になると予想されている.プロテオームは特定の生物が発現するタンパク質全体、またプロテオミクスは新しい技術を用いたタンパク質の包括的研究を示す言葉として使用されている.このようなプロテオミクスの方法論の進歩は、研究者の求める遺伝子・タンパク質を探索することが著しく容易になっている.栄養食品科学の分野においても同様であり、プロテオミクス技術により科学的な機能性評価の可能性が期待されており、食品による個別化疾病予防法といったものがにわかに現実味をおびてきている.カロリー制限が寿命を延長させることが知られていたが、そのシグナル伝達の詳細を解明中に発見されたSir2タンパク質の誘導にワインなどに含まれるポリフェノールが有効であることが報告されたが、食品と遺伝子発現、タンパク質との相互作用は最も活発に研究が行われている領域の一つである.本セミナーでは、疾病予防研究における食品の優位性、プロテオミクス研究の実際について解説し、われわれの取り組みを紹介したい.

第22回

日時 平成19年11月15日13:30-16:45
場所 農学部2号館1階第3講義室(化3)
演者 小田吉哉先生 (エーザイ株式会社/医学系研究科)
演題 質量分析を用いたプロテオミクス
要旨

第21回

日時 平成19年11月8日13:30-16:45
場所 農学部2号館2階第1講義室(化1)
演者 中村保一先生 (かずさDNA研究所/新領域創成科学研究科)
演題 ゲノムアノテーション
要旨 かずさDNA研究所は我が国初の大規模ゲノム塩基配列 決定機関である。1996年のシアノバクテリア (Synechocystis sp PCC 6803) の全ゲノム3.6Mbを解析を皮切り に、2000年に発表したシロイヌナズナ国際ゲノムプ ロジェクトでは全ゲノムの約1/4 (27 Mb)の配列決定と その領域の遺伝子発見を担当した。現在はミヤコグ サ、トマト、ユーカリなどの高等植物ゲノム解析を中心に、光合成微生物や植物に共生する微生物を対 象にゲノム解析を進めている。我々のラボは、こうした大規模ゲノムプロジェクトの情報処理ならびに情報公開の効率化・高度化を中心とした研究を展開 しており、新規ゲノム塩基配列の解析と提供にとど まらず、過去のゲノムアノテーションの見直しによる改善やデータべースの高度化にも力を入れてい る。本セミナーでは、我々の研究の最新の進捗状況 を報告するとともに、ゲノムプロジェクト由来情報を利用する際に注意すべき点と、実験生物学者が効 率良く使い倒すためのテクニックについても紹介す る。

第20回

日時 平成19年7月12日13:30-16:45
場所 農学部2号館2階第1講義室(化1)
演者 中尾嘉宏先生 (サントリー株式会社R&D推進部)
演題 ビール酵母ゲノム情報の産業利用
要旨 ビールが最初に造られた年代は定かでないが、紀元前3000年頃にメソポタミアのシュメール人が残した粘土板にはビールの造り方が記されており、その頃には既にビールが造られていたと考えられている。やがてビール造りはヨーロッパに伝わり、ドイツでは寒い冬にビールを仕込み、低温で貯蔵後,夏に出荷するビールを造り始められ、このビールはドイツ語で「貯蔵」を意味するラガーという語をつけラガービールと呼ばれた。さらにチェコで造られたラガービールの一種であるピルスナータイプは、黄金色を有し、従来のビールよりもすっきり飲みやすいため消費者の支持を受け、世界中に広がり現在最も飲まれているアルコール飲料となった。
ビールは上記のように長い歴史があり、かつ世界で最も飲まれているアルコール飲料にも関わらず、使用されているビール酵母は、生化学的、分子生物学的な解析が十分に行われておらず、ビール醸造適した酵母特性の分子生物学的メカニズムはほとんど明らかにされていなかった。そこで、我々は世界の生産量の9割以上を占めるラガービールの醸造に使用されているラガー酵母のゲノム解読を初めて行い、トランスクリプトーム、プロテオームなどの網羅的な解析手法を基にビール酵母の特性解明を行っている。また、得られた成果を酵母選択およびビール醸造品質管理に応用している。
本講義では、ビールの歴史と醸造工程を概説した後、ゲノミクス、トランスクリプトームなどの網羅的な解析手法を用いて明らかになった、ゲノムに刻まれたビールの歴史と醸造特性を解説すると共に、得られた成果のビール醸造への展開についても述べる予定である。

第19回

日時 平成19年7月5日13:30-16:45
場所 農学部2号館2階第1講義室(化1)
演者 岩田洋佳先生(中央農業総合研究センターデータマイニング研究チーム)
演題 作物育種におけるインフォマティクスの利用と応用
要旨 作物の形質を効果的に改良するためには、目的形質の遺伝様式や、目的形質を支配する遺伝子を明らかにしておく必要がある。そのためには、目的形質を正確に計測し、遺伝子と形質間の関係を適切にモデル化し、そのモデルに基づいた遺伝解析を行う、というプロセスが不可欠となる。現在、このようなプロセスにおいて、インフォマティクス技術・手法が様々な側面から利用・応用されている。
 本講義では、(1)デジタル画像解析を用いた作物形質の定量的計測、(2)メタヒューリスティックアルゴリズムによる作物ゲノム連鎖地図の効率的な構築、(3)計算統計学的手法による作物形質変異の原因遺伝子座の検出、という3つの話題を取り上げ、作物育種におけるインフォマティクス技術・手法の有用性と可能性について紹介したい。

第18回

日時 平成19年6月28日13:30-16:45
場所 農学部2号館2階第1講義室(化1)
演者 水口賢司先生 (医薬基盤研究所)
演題 創薬を目指したタンパク質の構造、機能予測
要旨  X線結晶解析やNMRにより実験的に決定されたタンパク質立体構造 の数は、近年飛躍的に増大している。タンパク質の構造や機能を予測す るもっとも有効な方法は、これらの大量実験データから得られる情報を 用いたモデリング、特に進化的類縁関係の同定を用いるものである。こ れらの方法の基礎理論を概観し、創薬への応用について述べる

第17回

日時 平成19年6月21日13:30-16:45
場所 農学部2号館2階第1講義室(化1)
演者 野田博明先生 (農業生物資源研究所/新領域創成科学研究科)
演題 作物害虫への新たな取り組み -トビイロウンカの機能解析-
要旨 イネの害虫であるトビイロウンカを中心に、EST解析・マイクロアレイ解析・遺伝子機能解析などについて紹介する。トビイロウンカは、東南アジアの稲作の重要害虫であり、我が国でも数百年前から飢饉の原因ともなってきた害虫である。 10年ほど前から発生量が減少したかに見えたが、2・3年前から再び増加に転じている。つまり、いつまでも根本的な解決には至っていないのが現状である。遺伝学などのバックグラウンドを持たない昆虫において、上記の解析技術やゲノム情報の蓄積は、その基礎生物学だけでなく、産業上の課題に取り組む素地を作るためにも重要である。

第16回

日時 平成18年11月16日(木)13:30-16:45
場所 農学部2号館1階第2講義室(化2)
演者 中尾嘉宏先生 (サントリー)
演題 ゲノム解析によるビール酵母のゲノム構造と特性解明
要旨  ビールが最初に造られた年代は定かでないが、紀元前3000年頃にメソポタミアのシュメール人が残した粘土板にはビールの造り方が記されており、その頃には既にビールが造られていたと考えられている。やがてビール造りはヨーロッパに伝わり、ドイツでは寒い冬にビールを仕込み、低温で貯蔵後,夏に出荷するビールを造り始められ、このビールはドイツ語で「貯蔵」を意味するラガーという語をつけラガービールと呼ばれた。さらにチェコで造られたラガービールの一種であるピルスナータイプは、黄金色を有し、従来のビールよりもすっきり飲みやすいため消費者の支持を受け、世界中に広がり現在最も飲まれているアルコール飲料となった。 ビールは上記のように長い歴史があり、かつ世界で最も飲まれているアルコール飲料にも関わらず、使用されているビール酵母は、生化学的、分子生物学的な解析が十分に行われておらず、ビール醸造に適した酵母特性の分子生物学的メカニズムはほとんど明らかにされていなかった。そこで、我々は世界の生産量の9割以上を占めるラガービールの醸造に使用されているラガー酵母のゲノム解読を初めて行い、トランスクリプトーム、プロテオームなどの網羅的な解析手法を基にビール酵母の特性解明を行っている。 本講義では、ビールの歴史と醸造工程を概説した後、ゲノミクス、トランスクリプトームなどの網羅的な解析手法を用いて明らかになった、ゲノムに刻まれたビールの歴史と醸造特性を解説すると共に、得られた成果およびバイオインフォマティクス技術の食品産業への利用展開についても述べる予定である。

第15回

日時 平成18年11月 9日(木)13:30-16:45
場所 農学部2号館2階第1講義室(化1)
演者 中川 智先生 (ザナジェン)
演題 身近になる微生物ゲノム解析
要旨  1995年にHaemophilus influenzae株の全ゲノム配列が決定されて以来、公的データベースに登録された微生物ゲノム配列数(微生物種数)は、ついに400を超えた。 NCBIのホームページで進行中とされる微生物ゲノムプロジェクトは600を超え、既に 1000以上の微生物種がゲノム解析の対象となった。
 微生物のゲノム解析を支えてきたのは、DNA配列決定技術やバイオインフォマティクス技術の進展である。近年ほとんどのゲノムプロジェクトは全ゲノムショットガン法により実施されるが、全ゲノムショットガン法による配列決定法における重要ポイントを概説する。
 また、次世代型塩基配列決定技術が急速に発展してきており、近い将来複数の新型DNAシーケンサが市場に登場することになる。このことは、短時間にゲノム配列の決定が可能になるだけではなく、配列決定コストの低下も期待されており、微生物ゲノム解析はますます身近なものになるものと期待される。
 さらには、これまでは、微生物ゲノム解析は、単離培養された微生物が対象であったが、次世代型DNAシーケンスアの出現は、培養困難な微生物をはじめとして、環境中に存在する微生物由来のDNAを直接解析するメタゲノム解析も急速に進展させると思われ、ゲノム科学的手法を用いた新たな微生物生態学がはじまろうとしている。
 今回の講義では、微生物の全ゲノム配列決定の概略、次世代型DNAシーケンス技術の開発動向、メタゲノム解析の動向などについて、紹介する。

第14回

日時 平成18年11月 2日(木)13:30-16:45
場所 農学部2号館1階第2講義室(化2)
演者 南 康文先生 (バイオシンクタンク)
演題 プロテオーム解析概論
要旨  ヒトを初めとする様々な生物の全ゲノム情報を手に入れたことにより、生命科学研究の進め方には大きな変革がもたらされた。個別のタンパク質ではなく、タンパク質の総体であるプロテオームを解析するという発想である。そして、細胞の中で繰り広げられる数多くのタンパク質分子同士のダイナミックな離合集散の様子を捉えることこそが生命の謎を解く鍵であり、それを可能にするのがプロテオーム解析である。本講義では、プロテオーム解析の現状を概観した上で、中でもその中心的な地位にある質量分析法について、実例の紹介を交えて解説する。

第13回

日時 平成18年10月 26日(木)13:30-16:45
場所 農学部2号館2階第1講義室(化1)
演者 田中隆治先生 (サントリー)
演題 ポリフェノール化合物の魅力-機能性食品素材を求めて
要旨  現在地球上に生息する60数億の人類、ホモ・サピエンスは約15万年前(様々な説がまだあるようであるが)アフリカ東海岸のサバンナで生活していた種族を共通の先祖とする事が米国カリフォルニア大学バ-クレ-校のアラン・ウイルソン博士とその仲間達により明らかにされてきた。すなわち「アフリカのイブ」が約15万年前に地上に現れた事を私たちに示した。我々の先祖は15万年という長い年月をかけ、果てしない旅の中で言語を作り、様々な食物を確保し、またそれを調理することにより生き長らえ、他の哺乳動物がなしえなかった地球のあらゆる地域に居住し、集団的活動を通して、文化、社会を形成してきた。その僅か15万年の間に、大きさ、形、体色、そして近年SNP’sの研究でも明らかのように様々な体質を有する民族が現れてきた。
 ゲノム研究は人類の起源、様々な生物の遺伝子配列とその機能、更には複雑な遺伝子発現機構と発現タンパク、それらの代謝メカニズム、さらにはシステマティクな生理機能をも解明しようとしている。このゲノム研究の進展より、人の形質発現(病気の要因、健康維持の要因)は個人が有する遺伝形質が発現する際にその生体内・外の環境要因が大きく関与すること、そしてその環境要因を解析すれば健康維持、疾病予防につながることを示唆するまでに至った。形質発現に大きく関与する環境要因として一般的環境要因と特殊環境要因が考えられ、一般環境要因としては、生まれてから死にいたるまでの生体を維持するための食物摂取、運動、そして地域の気象、文化、特殊環境としては薬剤摂取、タバコ、酒、都市環境、ストレスを含む多くの個人に対応した要因が考えられる。この中で最も注目される要因として食物、食事の習慣性が指摘されている。我々は長い年月をかけ、様々な食物を摂取してきた。時にはそれらの食物や飲料が健康を害したり、腐敗した食物が様々な疾病を引き起こしたりしてきた。それらの経験を通して、病気や体調不良の際に我々の先祖は日ごろの食物とは異なった植物、薬効を示す動物、或いはその臓器、鉱物をも利用してきたのではないか。そのような様々な食物(動物、植物、発酵産物、調理法の工夫、保存食)を摂取、更には栽培、飼育することにより、集団を形成し、文化、社会を形成してきた。様々な食物を確保すると同時に、もう一つ重要なものとして我々は口腔内細菌をはじめ多くのバクテリアを消化管内に保有するようになったのではないかと推測する。人間の体を構成する細胞が60兆個と考えられ、同時に我々が日常、保有する共生菌が100種、100兆個以上であるといわれている。この気の遠くなる共生微生物の数も我々が食べてきた食物数と大きく関わっているのではないかと考える。健康食品素材の多くは基本的な生理活性として抗酸化機能を持ったものが多いが、また消化管微生物へのかかわり、消化管微生物により代謝分解、或いは消化管微生物の生産物により誘導される免疫活性機能が注目されている。特に消化管を経緯し、複雑な代謝を受け、或いは多くの食物成分の複合的な組み合わせによって発揮される機能が健康維持、疾病予防効果につながることが期待されている。このような複雑な食品成分、或いはその組み合わせ成分の機能効果が、新しいバイオ技術の手法、「ニュートロゲノミクス」により明らかにされつつある。日本のバイオ科学の研究開発力は世界の高水準にあり、この技術を使用し、我々東洋で育んできた食文化、医食同源の世界観を科学し、健康寿命を維持する社会形成に貢献したいものである。そのためにも、食と健康維持、疾病予防につながる新しいバイオマ-カーを産官学一体となり探索し、世界に発信していきたい。今、まさに食の機能を考える時である。
 本日はその中で、植物ポリフェノ-ルの科学が弊社において、新たな商品開発に大きく貢献し、新しい考え方が、あるいはポリフェノ-ル研究の総合的な考え方が、既存の販売商品の付加価値、あるいは商品の新しいコンセプト形成にいかに役立ってきたかについてお話したいと考えます。

第12回

日時 平成18年7月13日(木)13:30-16:45
場所 農学部2号館2階第1講義室
演者 鈴木榮一郎先生 (味の素・ライフサイエンス研究所)
演題 タンパク質立体構造機能研究
要旨 I.前半:応用展開 酵素の仕組みを“かたち”から解く-産業利用を含めて-
 うま味調味料「味の素」は、主成分のグルタミン酸一ナトリウム一水和物(MSG;97.5%)と重要副成分の5’-リボヌクレオチドナトリウム(イノシン酸ナトリウムとグアニル酸ナトリウムの混合物;2.5%)からなる。立体構造抜きの進化工学でイノシンに対する親和性を向上させる改変には成功していたが、グアノシンのリン酸化反応の場合にはグアノシンの溶解度がイノシンに比べ一桁低いことが工業化推進上の大きな課題であった。そこで、実用酵素創生の具体的数値目標としてグアノシンに対するミカエリス定数(Km)の一桁低下させることと定め、酵素の高機能化に取り組んだ。また、同時に、活性中心への水分子の接近も抑制することにより、加水分解の抑制も可能であることも示すこととした。以上は、社団法人日本化学会平成16年度化学技術賞「立体構造情報に基づく工業用トランスフェラ-ゼ類の高機能化技術の開発とその実用ヌクレオチド生産酵素創生への応用」味の素株式会社の鈴木榮一郎、石川弘紀、三原康博、榛葉信久、及び、富山県立大学教授浅野泰久氏の計5名の共同受賞内容。
II.後半: 構造生物学における新規研究手法の開発
 まず独立に、2つの開発を行なった。1つは、味の素の、「コリネホルム菌というグルタミン酸を発酵生産する微生物や、特殊な酵素を利用し、研究対象の蛋白質に対して、NMRの構造データを得られやすくするため蛋白質を安定同位体で標識する方法」である。もう1つは、東大の、「研究対象の蛋白質の分子量が大きくても、生体分子が結合している状態の分子認識機構を立体構造レベルで明らかにできる新しいNMR測定技術の開発」であり、結合状態の相互作用を解離状態で観測する「転移交差飽和法」(Transferred cross saturation; TCS法)方法である。これらの技術開発をベースとして、次に、実用性のある超高分子量複合体系(vWFA3ドメインのコラーゲン結合)への適用が可能であることを実証できた。以上の研究は、平成12年からの小渕ミレニアム計画の一環で、産学官連携の研究所「生物情報解析研究センター」がお台場に設立され、経済産業省・NEDOによる「生体高分子立体構造情報解析」プロジェクト、嶋田一夫TL(東大院薬教授)のもと、主として、産総研高橋栄夫氏、JBIC西田紀貴氏、尾上弘美、榛葉信久、鈴木榮一郎の5名で行なわれた(第13回化学・バイオつくば賞受賞「NMRによる超高分子量系の生体分子間相互作用解析法の開発」)。
 以上の方法は、サンプルが比較的豊富に入手できる場合の研究手法であるが、微量サンプルで情報取得を要求される場合も多い。そこで、μMetalTipを用いた、微量サンプルで立体構造情報を取得する方法の開発-質量分析の有効利用-を紹介する。

第11回

日時 平成18年7月 6日(木)13:30-16:45
場所 農学部2号館2階第1講義室
演者 森下 真一先生 (東京大学大学院・新領域創成科学研究科・情報生命科学専攻)
演題 ゲノム解読、ゲノム進化の現状と今後 そして支えるソフトウエア技術
要旨 脊椎動物では約10種のゲノムの染色体地図がほぼ完成し、ゲノムがどのように進化してきたかという議論が盛んである。本講義では、このような結果を出すために必要なロジックとソフトウエア技術について講義する。

第10回

日時 平成18年6月29日(木)13:30-16:45
場所 農学部2号館2階第1講義室
演者 西 達也先生 (ジナリス)
演題 「ゲノムとメタボロームが築くバイオ新産業とバイオベンチャーへの期待」および「微生物ゲノムアノテーション概論とメタボローム研究の基礎」
要旨 「ゲノムとメタボロームが築くバイオ新産業とバイオベンチャーへの期待」
生命科学の発展の歴史を考察し、ゲノム研究とメタボローム研究がバイオ産業の発展に大きく貢献すると予想されることを概説する。またバイオベンチャーの実態や産業発展における役割などについても述べる。

「微生物ゲノムアノテーション概論とメタボローム研究の基礎」翻訳領域、tRNA、rRNA、遺伝子産物の機能の予測などの微生物ゲノムアノテーションの手法や質量分析器を活用したメタボロームの研究手法について概説する。

第9回

日時 平成18年6月20日(火)17:15-20:30
場所 農学部2号館2階第1講義室
演者 水谷 悟先生 (キリンビール)
演題 キリンビールにおけるバイオインフォマティクスの取組みについて
要旨 弊社では1997年からバイオインフォマティクスに関する技術開発を行っている。これまでに開発してきたゲノムデータベース検索システム、プロテオーム解析ツール、マイクロアレイ解析システムをはじめとする各種検索・解析システムについて概要を紹介すると共に、ビール酵母ゲノム解析、テキストマイニング技術の開発、等についても取り組み内容を紹介する予定である。

第8回

日時 平成17年12月16日(金)13:30~
場所 農学部2号館2階第1講義室
演者 坊農秀雅先生 (埼玉医科大学ゲノム医学研究センター)
演題 ゲノムスケールの転写因子結合サイト解析
要旨 ゲノム配列解読プロジェクトの結果、さまざまな生物種のゲノム配列情報が利用可能となってきている。また、さまざまな生物種、発生ステージ、組織、ある種の刺激(薬剤や環境変化)における遺伝子発現プロファイルの情報も遺伝子配列同様公共データベース化され、利用可能となってきている。現在、コンピュータ上で「実験」(in silico)することによって、それらの情報からゲノムにコードされた生物学的な特徴を見つけることが至上命題となっている1)
そういった状況下で、私は転写因子結合サイトをコンピュータで解析できる形にしてゲノム全体において予測し、一般に広く用いられているゲノムブラウザー上で閲覧できる、SayaMatcher(狭山茶)と呼ばれるシステムを構築した2)。このシステムは現在埼玉医科大学ゲノム医学研究センターの複数の研究室で使われ、遺伝子発現制御ネットワーク研究の道具として活用されている3)
本セミナーではSayaMatcherを用いた解析について紹介し、それによって得られる予測されたゲノムスケールの転写因子結合サイト情報と、マイクロアレイによる全遺伝子の発現変化やゲノムタイルアレイと組み合わせたクロマチン免疫沈降(ChIP on chip)の実験結果との統合解析の現状と諸々の問題点について議論する。
  1. 岡崎康司、坊農秀雅編: ゲノム情報はこう活かせ! 羊土社 2005
  2. Bono HU: Gene in press.
  3. Horie-Inoue K, Bono H, Okazaki Y, and Inoue S: Biochem Biophys Res Commun, 325, 1312-7 (2004).

第7回

日時 平成17年11月22日(火)13:30~
場所 農学部2号館2階第1講義室
演者 川端 猛先生 (奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科)
演題 蛋白質表面のポケット形状の発見による低分子結合サイトの予測
要旨 低分子が結合する部位、特に酵素の活性部位は、蛋白質表面の凹んだポケット型の窪みにあるといわれている。だから、蛋白質表面のポケット部位を発見することは、構造からの結合部位予測の第一歩と考えられ、様々なプログラムが既に開発されてきているわけだ。しかし、ポケットの数学的な定義は決定的なものはなく、プログラムによって様々である。我々は、ポケットを「小さな球は入れるが大きな球は入れない空間」と新たに定義し、3つの蛋白質原子に接するプローブ球に限定して、ポケット空間を近似的に求めるプログラムphecomを開発した。これは、大小2つのプローブ球を使うことで、認識するポケットの「深さ」と「大きさ」を調節できる。PDBデータベースの複合体の構造から、結合部位がポケット的であるかどうか調べたところ、特に低分子の結合については有意な相関が見られ、本プログラムが結合サイト予測のフィルタとして有効であることがわかった。また、様々な分子のタイプごとに、その結合サイトを認識するための最適な「深さ」と「大きさ」のパラメータを探索した。その結果、HEM, FADなどの補酵素は、深く大きなポケット部位に位置すること、ATP、GTPやペプチドは、比較的浅いポケット部に結合することがわかってきた。これらから、想定する結合分子のタイプによって、注目するポケットの深さや大きさを変えることが、結合部位予測に有効であると思われる。

第6回

日時 平成17年11月10日(木)13時30分~15時00分
場所 農学部2号館2階第1講義室
演者 小池亮太郎先生 (東京工業大学 学術国際情報センター)
演題 確率的アライメントによる進化的類縁関係の検出
要旨 タンパク質科学において、進化的類縁関係は基盤となる情報の1つである。進化的類縁関係の検出においては配列を比較しその類似性を明らかにする方法が重要な役割を果たす。これらの方法はアライメントを一意的に決定する。配列の類似性はそのアライメントから求められ、その類似性で進化的類縁関係を判定する。しかし、このようにして得られるアライメントは評価関数や最適化法に左右される。この問題は類似性が低くなるほど顕著となり、出力されるアライメントと等価なアライメントが多数存在することが知られている。このようなアライメントを準最適アライメントという。この問題を軽減するための方法として、準最適アライメントを検出する方法が開発されてきた。ここで、我々はこの問題に対する別の解決法として、全てのアライメントを確率的に記述する方法を提案する。確率的アライメント法は、基本的に1次元のイジング模型にもとづいている。アライメントをスピン状態、アライメントのスコアをポテンシャルと見立てることで、全アライメントを分配関数として記述し、アライメントを確率的に表現することを可能にする。この新たに開発した方法の性能を調べるために、進化的類縁関係にあるとされるタンパク質に適用し、BLASTやPSI-BLASTと性能を比較した。ここでは類似度のローカリティーやホモログの多寡に観点をあてた。その結果、データベース中に類似の配列をもたないタンパク質(Orphan protein)に対して確率的アライメント法は高い検出感度を示した。また、この方法をSCOPで未分類のOrphan proteinであるRPFやLatexinについて適用した結果についても発表する。

第5回

日時 平成17年5月19日(木)13時30分~15時30分
場所 農学部2号館2階第1講義室
演者 古澤 満先生 (株式会社 ネオ・モルガン研究所 取締役 CSO )
演題 不均衡進化理論による生物の進化的改良
要旨
  • 中途半端な首の長さのキリンの化石が見つからない ことや、カンブリア爆発等、進化は断続的に進むとされる 進化の断続的平衡(Gould & Eldredge, 1977)現象とその理由を考察します。
  • 精度の高いDNAポリメラーゼと 間違いを起こしやすいDNAポリメラーゼが一定の割合で共存することが進化を加速させる原動力になり得ることを説明します。
  • 従来考えられていた突然変異率の臨界点(突然変異の閾値)を超えた突然変異が起こりうることの説明、さらに人為的に突然変異の閾値を越えた変異を起こすことが可能であることを説明します。
  • こういった考え方を、非常に単純で美しい数理モデルとして証明します。
  • さらに、酵母や大腸菌といった実際の生物による実証例も説明します。

第4回

日時 平成17年4月21日(木)15時00分~
場所 農学部2号館2階第1講義室
演者 広川貴次博士 (産業技術総合研究所生命情報科学研究センター)
演題 タンパク質立体構造予測の実際:構造構築と評価まで
要旨  近年、タンパク質の立体構造予測は、既知構造の利用を前提とした構造認識法(ホモロジーモデリングを含む)、フラグメントライブラリに基づいた全体構造の構築を行う方法(フラグメントアセンブリ法)、フォールディングパスウェイ等を考慮した物理化学的手法による方法、に分類される。研究者が興味を持ったタンパク質について配列情報から立体構造を予測したい場合、先にあげた方法をどのように使い分け、活用していけばよいだろうか。本講演ではこれから立体構造予測を始めたい研究者の視点に立って、各手法の概要や構造予測のプロトコルを中心に紹介したい

第3回

日時 平成17年4月21日(木)13時30分~
場所 農学部2号館2階第1講義室
演者 富井健太郎博士 (産業技術総合研究所生命情報科学研究センター)
演題 タンパク質立体構造予測のための配列解析技術
要旨 タンパク質の立体構造を知ることによって、その機能を理解する上で重要な情報を得られる場合が非常に多い。しかし、大量のアミノ酸配列情報が明らかになってきている現状と比較すると、立体構造が解明されているタンパク質の数はそれ程多くない。本講演では、実際的なタンパク質立体構造予測に有益なアミノ酸配列解析技術を、2004年に行われたタンパク質立体構造予測実験CASP6 (6th Community Wide Experiment on the Critical Assessment of Techniques for Protein Structure Prediction)での使用例にも触れながら、紹介する

第2回

日時 平成17年3月23日(水)13時30分~
場所 農学部2号館2階第1講義室
演者 Prof. Jeffrey L. Thorne
(Bioinformatics Research Center, North Carolina State University)
演題 Incorporating phenotype into models of sequence evolution
要旨 The relationship between phenotype and survival of the genotype is central to both genetics and evolution. Protein-coding DNA sequences are genotype whereas protein tertiary structures are a fundamental unit of phenotype. We are studying the impact of protein structure on the evolution of protein-coding DNA sequences. Similarly, we are investigating the impact of RNA secondary structure on sequence evolution. In contrast to widely used procedures that largely model change of genotype as being independent of phenotype, our approach incorporates phenotype via adoption of sequence-structure compatibility measures that computational biologists originally designed for the purpose of protein fold recognition. A consequence of our genotype-phenotype models is the necessity to abandon computational strategies that are conventionally employed to study molecular evolution. In addition to protein tertiary structure and RNA secondary structure, there are a wide range of other aspects of phenotype that are being predicted in silico by computational biologists. We emphasize that these other in silico systems can also be exploited to better characterize the evolutionary relationship between genotype and phenotype.

第1回

日時 平成17年3月22日(火)17時15分~
場所 農学部2号館2階第1講義室
演者 清水青史博士
(Structural Biology Laboratory, Department of Chemistry, The University of York)
演題 水と生化学反応 - その熱力学と構造生物学
要旨 水は生物の体の重量の殆どを占める。そんな水は生化学反応(分子認識、酵素機能、タンパク質の折畳みなど)にどのような影響をおよぼすのだろうか?
また、細胞の中には、水以外にも多種多様な溶媒分子が存在する。たとえば、糖類やポリオールなどは高温高塩などの厳しい環境からタンパク質や酵素をまもるために広くもちいられている。そのしくみはどうなっているのだろうか?
生化学は主に希薄溶液のなかで研究されてきた。それにたいして細胞質は、反応にかかわらない無数の分子で混雑している。それらは反応にどのような効果をおよぼすのだろうか。
上の疑問には、かんたんな熱力学測定と構造生物学の組み合わせによって答えることができる。本講演では、その方法について論ずる。